NPO主催の「こどもアートLab」同行記

小学生を対象としたアートワークショップをスタート

 既成概念にとらわれず、さまざまな「つくること」にチャレンジしてほしいと、秋田公立美術大学の教員や卒業生を講師(リーダー)に、小学生を対象としたアートワークショップ「こどもアートLab(ラブ)」が8月からスタートした。毎月1回の開催予定で、NPO法人アーツセンターあきた主催。2回目の9月28日に開かれたワークショップに記者も同行した。(伊藤志郎)

自然素材から生れる「素敵な作品」つくりにチャレンジ

秋田公立美術大の村山修二郎准教授や卒業生が指導

 集合場所となった秋田公立美術大学サテライトセンターは、秋田駅西口から徒歩3分のフォンテAKITAの6階にある。大学の広報拠点として、公開講座や授業成果展などを開催する一方、デッサンスクールなども行っている。

NPO主催の「こどもアートLab」同行記

「こどもアートLab」に参加し、自由に空を描いている小学生と保護者=秋田市千秋公園

 この日のワークショップは、「自然素材で空をえがく」をテーマに、同大学の村山修二郎准教授がリーダー役を務めた。

 午前10時、センターに集まった小学生9人と保護者は、特別な許可をもらいフォンテAKITAのビル屋上に。遠くに青く霞(かすみ)がかった山並み、眼下には市街地を望む。親も子も屋上に寝転がり空を見る。たまたま太陽の周りに巨大な光の輪が出ていた。

 下に降り、デパートの地下通路を通り、上空に電線や電話線が複雑に入り組んだ狭い道を過ぎて、千秋公園へと石の階段を上り、久保田城の表門をくぐる。周囲には松や桜の大木。砂利を敷いた広場のある広々とした空間が待っていた。

 「空が見える風景。空を意識して。ただし基本的には自由。建物や葉っぱだけになるかもしれない」「学校で使っているような筆や鉛筆ではなく、自然物を使って描きます。手を使ってもいいし、葉っぱや枝を筆代わりにしてもいい。葉っぱを丸めたり、石を使ってもいいです」

 村山さんの説明が続く。

 まず、丸まった紙の延ばし方。「地面や石垣に押し付けて。地面のデコボコが紙に転写される。斜め構図でもいいし、紙を2枚つなげてもいい。失敗を意識しないで好きにやってください。全部白がなくなっても、用紙からはみ出してもいい。葉っぱをくっつけちゃってもいいです」と説明し、制作がスタートした。

 「絵の具」に相当する渋墨と柿渋をそれぞれ紙コップにもらい、A1サイズの画用紙(841×594mm)を持ち、好きな場所に広がって描き始める。中央に樹木を描く子、空の大きな広がりを見せるように地面と草原を指や木の枝で描くなどさまざま。

 記者も、村山さんの「失敗を意識しないで、自由に描いてください」との言葉に絵心が触発され、突然ながら挑戦することにした。

NPO主催の「こどもアートLab」同行記

「こどもアートLab」に参加し、落ち葉に柿渋などを付けながら描く小学生=秋田市千秋公園

 フォンテAKITAの屋上で見た巨大な光の輪、千秋公園までの道のり、過去にテレビで見た芸術家の映像などを頭の隅から探り出す。

 シャツを腕まくりし、落ち葉でグルグルと円を描く。指先で墨を飛ばし、松ぼっくりを転がす。2枚を重ねて下の白色を温存する……などと夢中になり、2枚とも抽象画らしき格好となった。

 子供たちが制作する様子を巡回していた村山さんは、戻ってくるなり、さっと描いて、あっという間に完成。墨流しの技法を使ったという。墨が節々として残る様子が美しい。

 男の子は「色を出すのが難しかった」と言い、女の子は「鮮やかな色を使わなくても、きれいにできた」と感想を述べた。また女の子の母親は「ビルの暗い地下道から上がって見た緑が印象的でした。全身でアートをする体験ができ、私も楽しく過ごせた一日でした」と話した。

 村山さんは「普段使わない素材や大きな紙。手触りで描く感覚。絵の具や鉛筆を使わない絵は、太古の時代の人には当たり前の表現。子供も大人も思い切ってチャレンジできた。自然の色に温かみがあるし、とてもすてきな作品になった」と全体の感想を語った。今後のワークショップは、10月「音をあつめて演奏しよう」、11月「人形をつくろう」を予定している。