軽視される北のEMPの脅威
北朝鮮の長距離ミサイルの脅威に関して米国の政府、ミサイル専門家らにほとんど見落とされていることがある。北が電磁パルス(EMP)爆弾による攻撃を行う危険性があるという点だ。
国防総省は当初、北朝鮮の新型ミサイル「火星14」は、射程3000から5500㌔の中距離ミサイルと考えていた。しかし、その後の分析で、射程5500㌔を超える大陸間弾道ミサイル(ICBM)であることが明らかになった。
議会のEMPに関する委員会に携わったことのあるピーター・プライ氏は本コラムに、「北朝鮮のICBMによる脅威の分析で最も重要なのは恐らく、ICBMがEMP攻撃に使用される可能性が指摘されていないことだ」と主張、「ほとんどのアナリストは、米国への北朝鮮のICBMが脅威となるのはまだ何年も先のことだと予測している。北朝鮮はまだ、大気圏再突入と精密誘導の技術を開発していないため、米国の都市を攻撃できないはずだと考えているからだ」と述べた。
しかし、EMP攻撃は上空32㌔から400㌔の宇宙空間で核弾頭を爆発させるため、再突入体は必要ない。精度も要求されない。何百平方㌔㍍にも及ぶ範囲全域の電子機器すべてに影響を及ぼすことができるからだ。
同氏は「たしかに北朝鮮のミサイルはまだ、米大陸に到達し、EMP攻撃を仕掛ける能力を備えるには至っていない。しかし、実行されれば、何カ月、何年間と送電網を使用できなくし、多数の米国人を危険にさらすことになる」と指摘したうえで、「太平洋やカナダ上空の高高度で爆発させれば、米本土まではそれほど遠くない。…EMPは、今ここにある脅威だ」と警鐘を鳴らした。
ウールジー元米中央情報局(CIA)長官は、北朝鮮の新型ミサイルの射程にばかりとらわれるのは間違いだと指摘した。北朝鮮はすでに、EMP攻撃に使用可能な核爆弾を地球周回軌道上に載せられるミサイルを保有している。