変化に驚く友人


地球だより

 ロシアの大学で一緒に学んだ日本人の旧友が、8年ぶりにモスクワを訪れた。ソ連崩壊後の激動の時代を経て、最近のロシアでは、人々の生活にはあまり大きな変化はないように感じていたのだが、旧友は興奮気味にこう語った。

 「白タクはどこに行ってしまったんだ。手を挙げても誰も止まらない。それ以上に驚いたのは、近くにいたロシア人が、スマホのアプリでタクシーを呼んでいるじゃないか」

 白タクは、そういえばしばらく前に禁止になった。あのアプリはヤンデックス・タクシーといって、米国の配車サービスアプリ「Uber」のロシア版みたいなもの。行きたい場所をタッチすると料金が表示され、近くの登録ドライバーが迎えに来る。アプリには評価システムがあり、悪い評価を付けられるとドライバー登録を抹消されるので、みんな真面目に運転してくれる。

 「マクドナルドやKFCに行ったら、壁に大きなデジタルサイネージみたいな表示板があって、みんなメニューの絵をタッチして注文している。クレジットカードで支払うと番号札が出てきて、注文が準備できたらカウンターで受け取る。日本じゃ見たことないぞ」

 「ショッピングモールがまた幾つも増えたね。何であんなに豪華で巨大なんだ。歩くだけで疲れる。それに何と言っても、警官が身分証チェックで呼び止めないじゃないか。言い掛かりをつけてカネを巻き上げる悪徳警官がいないだけで、すごく安心して街を歩ける。プーチン大統領の支持率の高さもよく理解できる」

 ここに住んでいると当たり前になってしまっていたのだが、確かにロシアは変わり続けているのだと思う。

(Y)