特殊部隊に取り囲まれる
地球だより
皆さんはある日突然、犯罪者のように扱われたことはあるだろうか。
先日、モスクワの空の玄関・シェレメチェボ国際空港の鉄道駅近くで、筆者はそのような体験をした。ガムを買おうと思い立ったのだが、キオスク店内の通路は非常に狭いためスーツケースを持ち込むのを躊躇(ちゅうちょ)し、入り口に置いたままにしてしまったのだ。
会計が終わるまで1分も経(た)っていないのだが、店を出た途端に屈強な特殊部隊員らに取り囲まれた。スーツケースの中身をすべて出すように命じられ、さらに身体検査も受ける羽目に。
実は筆者は、2011年にモスクワ南部のドモジェドボ国際空港で自爆テロが発生し35人が死亡した事件で、日本に一時帰国するため同じターミナルに居合わせ、危機一髪で難を逃れた経験がある。ロシアはテロの危険と隣り合わせであり、治安機関は常に厳戒態勢であることは知っていたはずなのだが、軽率だった。
筆者を取り囲んだ特殊部隊員の高圧的な態度には正直、頭にきた。だが、彼らは命の危険と隣り合わせで職務を遂行しているのだし、やはり悪いのは筆者である。
ただ、気になることがある。9月に行われた下院選でプーチン大統領支持の与党が圧勝し議席の4分の3を占め、政権基盤が大幅に強化された。
これを受けプーチン大統領は、治安機関の再編に動くという見方が広がっている。テロ対策は必要である。ただ、テロ対策に名を借り、旧ソ連時代のような人権侵害を行うことは御免被りたい。
(N)