軍人の禁煙


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 開封5日で200万人の観客を引き入れた映画『仁川上陸作戦』。ダグラス・マッカーサーに扮(ふん)したリーアム・ニーソンは空母の甲板でコーンパイプをくわえて砲弾が降り注ぐ夜空を見つめる。煙草の煙は成功確率5000分の1の作戦の開始を命じるマッカーサーの悲壮感を包み隠さず見せてくれる。効果満点だった。

 戦場の軍人たちにとってたばこは銃の次に必要なものだった。米軍は第2次大戦の時、戦闘食糧(Cレーション)補助物品としてたばこと紙マッチを兵士たちに提供した。韓国動乱の最初の従軍記者だったマーガレット・ヒギンズはキャメルたばこのモデル役を厭(いと)わなかった。動乱が始まるや否や韓半島に飛んできたこの女記者はたばこの箱のモデルとなって写真1枚で青春の熱情を慰めていた戦闘兵たちを慰労した。

 元英国総理のウィンストン・チャーチルは第1次大戦の時、佐官クラスの将校として参戦し、部下たちの戦争ストレスを軽減させようとして「戦争は笑いながらするものだ」という名言を残した。当の本人はシガーに頼ってストレスを解消した。日本の神風特攻隊の隊員たちは出撃前に、天皇から恩賜のたばこを贈られた。彼らは自分の命をかけて忠誠を誓った。

 ほとんどすべての大韓民国の男性たちの意識を支配するたばこがある。赤い帽子を目深に被った下士官が叫ぶ声。「たばこ一発、装てん!」。猛暑の中、埃が舞い上がる地べたに座り込んで脂汗を流しながら吸う1本のたばこで遊撃訓練の恐怖と苦痛を吹き飛ばすことができた。たばこは同志愛を芽生えさせる媒介役も果たした。そのためか訓練兵たちにとってたばこは恋人以上だった。たばこを吸えない人も吸うようになった。インディアンたちは外部の人間を迎える時、たばこを回しながら吸って警戒心を解いた。中南米のインディアンたちが7000年前に薬として栽培したのがたばこだ。

 時代が変わった。軍でたばこが消え去る運命だ。国防部(部は省に相当)が今日、禁煙広報大使を委嘱した。主人公は8人組の女性アイドルグループ、ラブリーズだ。禁煙が安保と直結するという認識から出てきたアイデアだ。中国の習近平国家主席が禁煙に成功したと世界保健機関(WHO)の事務総長が宣伝するくらいなので、世の中が変わったのは間違いない。「たばこ1発、装てん!」という言葉も禁止される運命だが、戦友愛まで捨て去ってはならないはずだ。

(8月2日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。