目減りする「母親資本」


地球だより

 経済の後退感が否めない新年のロシア。欧米の経済制裁が続き、原油価格の下落も止まらない。原油輸出から得られる税収を基盤としたロシアの準備基金も、いよいよ枯渇するのとの予測もある。

 昨年ロシア政府は準備基金を1兆5600億ルーブル(約2兆4400億円)取り崩し、赤字を補填した。このままだと3年後には基金が底をつくだろう。

 プーチン大統領は2006年、2人以上の子供を持つ母親に対し、25万ルーブル(約70万円)を給付する「母親資本」制度を導入した。これは平均的なロシア人の年収を超える額であり、出生率は見事に改善した。ルーブル高が進んだ2011年には、日本円換算で110万円にもなった。

 友人のパーベル君(33歳)は子供が4人。彼の家庭は「大家族」と認定され、さらに高額の給付金を受け取っている。地下鉄やバスも家族全員が無料。動物園などの公共施設もフリーパスである。

 給付金の用途は決められているものの、家計に大きな余裕ができることに違いはない。パーベル君はホクホク顔で40インチの大型液晶テレビを買ったり、高性能パソコンを買ったりしていた。

 しかし、この「母親資本」給付金も、ルーブルの暴落により、日本円換算で50万円程度となった。

 それだけではない。これら給付金を支える準備基金が底をつけば、「母親資本」制度もなくなってしまうかもしれない。

 経済危機の中でもロシア人たちは楽観的だったが、これからは変わるだろう。準備基金の枯渇とともに、彼らの本音が露見してくるかもしれない。

(N)