通夜政治


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 毎年、菊祭りが開かれる馬山市内で菊の花がなくなったことがある。2008年10月、金泳三元大統領(YS)の父親、故金洪祚氏の5日葬の期間だ。遺体が安置された慶尚南道・馬山のサムスン病院の葬儀場を埋め尽くした花輪が400に達し、祭壇の遺影の周辺とリムジンの霊柩車を飾る菊の花まで合わせると7万本余り使われたという。YSは「父は最後まで馬山に貢献した」と語った。当時、YSは花輪は受け取ったが香典は受け取らなかった。

 一般人にとって通夜は、個人を追慕する場所に留まるが、政治家にとっては生きている政治の現場だ。通夜に訪れる人も、訪ねない人もそれぞれの政治的な理由があるものだ。今年2月、金鍾泌元首相(JP)の夫人、故朴栄玉氏の通夜・葬儀が行われた邸宅は政界に多くのニュースを発信した。異例なことに朴槿恵大統領が直接弔問し、金武星代表はじめ与党議員はもちろん、金大中元大統領の夫人、李姫鎬氏と野党議員も列をなして弔問した。JPは、大統領の補佐の仕方、ナンバー2の身の処し方、議員内閣制改憲など、弔問客におあつらえ向きの助言を行う“通夜政治”を行った。

 今年8月の朴相千・新政治民主連合常任顧問の通夜では、康津の土壁の家で蟄居中の孫鶴圭元同党顧問の弔問と、劉承★前セヌリ党院内代表との遭遇が注目を集めた。林采正元国会議長は、孫氏と劉氏、金富謙前国会議員に対し「ここで新党をつくればいいな」と冗談をいった。巷の“中道新党説”を皮肉ったのだ。青瓦台(大統領官邸)と対立した末に辞任した劉氏に対する野党側の関心が底流にあった。

 今度は劉氏が通夜政治の主人公となった。先週末、彼の父親、劉守鎬元国会議員の通夜に与野党議員が相次いで訪れた。徐清源最高委員をはじめとする親朴系議員たちの弔問より話題になったのが花輪だった。国会議長と首相、与野党代表など160を超える花輪の行列の中に一つ、朴大統領名義の弔花がなかったためだ。青瓦台は弔花を謝絶するという喪主の意志に従ったというが、李丙琪秘書室長は花輪を送った。付属室の許可なく大統領名義の祝電、蘭・花輪の措置が難しい点を考慮すると、大統領の隠れたメッセージがあるのではないかと思わざるをえない。大統領の政務特別補佐官を務めた尹相現議員の喪家での発言“TK(大邱・慶尚北道人脈のこと)刷新論”を想起するのは過敏反応だろうか。

 (11月10日付)

★=日へんに文

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。