回収品から1万円札524枚


地球だより

 ベトナム最大の商都ホーチミン市で屑鉄(くずてつ)回収業をしているホンさん(36)が、見知らぬ人から10万ドン(約570円)で買い取った中古スピーカーの中から日本の1万円札524枚が発見されたのは昨年春のことだった。ホンさんは、暮らしは貧しいというが「私のものではないので返したい」と、正直に警察に届け出た。

 結局、1年たっても誰も自分の所有物だとして申し出ることはなく、ホンさんは524万円の所有権を得ることになった。

 約400万円分は直ちにベトナム通貨ドンに両替されたものの、残る100万円弱の1万円札が腐食したりして両替には適さず、日本の銀行に持ち込まれていた。

 このほどその100万円弱も両替されることになった。日本で両替の後、1カ月以内にホンさんへ送金される見通しだという。

 大金を手にしたベトナムのシンデレラ家族ホンさん一家の生活は好転する。ホンさん夫婦は、家計が苦しく幼い子供2人を田舎の両親に預けて出稼ぎをしていたが、今回の事件を機に新しく部屋を借り、子供たちをホーチミンに呼び寄せ一家4人で暮らし始めている。

 家庭破壊など人生の破局を迎える人が宝くじ高額当選者などに多い中、ホンさん夫婦は大金を手にした後も、昔通りに黙々と屑鉄回収業を続けている。

(T)