法王の下院演説を花道に


地球だより

 米議会下院は米国民主主義の主権在民の原則を代表する機関である。このところ、国際、米国内ニュースの舞台になっている。

 9月下旬には、ローマ法王フランシスコが訪米し、ワシントンの米議会下院本会議場で歴史的な議会演説を行った。ローマ法王の訪米はこれが3回目だが、議会演説は初めて。法王が率いるローマ・カトリック教会は、米国内には7千万人、全世界には12億人の信者を抱え、その影響力は宗教的だけでなく政治的にも絶大だ。

 法王の議会演説は、敬虔なカトリック教徒であるジョン・ベイナー下院議長がそれを切望し、実現した。米議会の主導権を握る共和党内で派閥対立が激化し、ベイナー下院議長はそのまとめ役として苦労している。ローマ法王の議会訪問中、ベイナー氏は涙ぐむことが多く終始感動を抑えきれない様子だった。ところが、法王演説翌日の9月25日、同氏は急遽(きゅうきょ)記者会見し、10月30日をもって下院議長を辞任することを表明した。法王の議会演説実現を花道にすることを考えていたことは間違いない。

 次期下院議長には、下院共和党ナンバー2の地位にあるケビン・マッカーシー共和党下院院内総務(共和、カリフォルニア州)の選出がほぼ確実視されていた。しかし8日、議長選出のための共和党下院議員集会を前に、マッカーシー氏が議長選から撤退を表明。下院議長選は混迷を深めている。下院共和党の混乱は大統領選にも影響する。

 下院は現在、2016年度連邦予算をめぐるホワイトハウスと議会の駆け引きの中心舞台にもなっている。

(K)