ムスリム同胞団への無知


地球だより

 先日、オーストリア生まれで英国人と結婚したある友人から連絡があった。娘がエジプト人と結婚しカイロに住んでいることから、英国での会合で、北アフリカ諸国の現状についてのスピーチを依頼されたのだという。娘の意見と共にジャーナリストの筆者にも、意見を聞きたいということだった。

 「アラブの春」以降の動きを解説し、イスラム過激派の温床として、隠然たる影響力を中東や欧米にも与えているムスリム同胞団の動きも伝えたが、彼女は同胞団についての知識はほぼ皆無であったことのみならず、イスラム教徒が聖典とするコーランに、異教徒や無神論者に対する激しい暴力表現があることすら知らず、びっくりしていた。コーランに暴力表現があるとは全く知らなかったという。

 彼女は、反論のつもりだろう、当初、友人のイスラム教徒が難民の受けいれに奔走している様子を伝えてきた。

 さらには、エジプトの裁判所が、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラの記者やカメラマンらに対し厳しい判決を言い渡した例などを送ってよこしたが、私が、同胞団の実態やイスラム過激派とのつながり、コーランの中にある代表的暴力表現などを送付するにつれ、認識を一変、イスラム教が抱える抜本的問題点やムスリム同胞団の世界イスラム化を目指す暴略、国家のイスラム化と世界のイスラム化を目指す“聖戦”のためには、暴力もいとわない体質などを理解するようになった。

 彼女のスピーチを聞いた仲間の反応は目に浮かぶようだが、イスラムに対する無知を克服し、「欧米諸国がいつの間にかイスラム国家になっていた」というような時代を迎えないよう頑張ってほしいものだ。

(S)