忘れるな!中国共産党政権の「犯罪」
韓国の朴槿恵大統領が中国・北京で3日開催される抗日戦争勝利70周年式典に参加し、軍事パレードにも付き合うという。韓国のメディアは、「中国側は式典に参加する首脳国を発表する際、朴大統領をロシアのプーチン大統領よりも先に紹介した」と伝え、同式典にハーグの国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で追及されているスーダンのバシル大統領も参加することには何も言及せず、朴大統領の式典参加決定を好意的に報じていた。
一国の首脳が他国主催の歴史的式典に参加するか否かはその国の国益から判断される。欧米主要諸国が北京の式典参加を見合わせているなか、朴大統領の参加は目立つ。そして「なぜ」といった疑問がどうしても飛び出す。
明確な点は、朴大統領が欧米諸国の首脳が参加しない式典に顔をみせることが韓国の国益にかなうと判断したことだ。実際、大統領府は、「隣国の中国との友好協力関係を考慮する一方、朝鮮半島の平和と統一に寄与する中国を期待する」として、「中国で韓国の独立抗争の歴史をたたえる側面を勘案し、行事に出席することにした」(聯合ニュース)と説明している。
朴大統領の式典と軍事パレードの参加決定は予想されたことだが、当方は韓国外交に汚点を残すと受け取っている。朴大統領は中国共産党の歴史を熟知しているはずだ。文化大革命の名で数千万人が粛清され、迫害された。それだけではない。中国伝統気功・法輪功の信者たちは今も弾圧され、収容所に拘束された信者たちから臓器が摘出され、国際闇市場で売買されているのだ。カナダ人権活動家たちが中国の不法臓器売買については既に警告済みだが、スイスの国会議員ら10人が先日、中国の習近平・国家主席宛てに連署の書簡を送り、法輪功の集団弾圧を命令、執行した江沢民元国家主席の刑事責任を追及するよう求めているほどだ。
共産政権の悪魔性については旧ソ連・東欧の共産政権時代を想起すれば理解できるはずだ。共産党政権は一党独裁で「言論の自由」、「結社の自由」は認められず、「宗教の自由」も剥奪されている政治体制だ。中国は西側資本主義経済を導入して経済発展を遂げたが、その政治体制は依然一党独裁だ。
中国経済の発展の恵みを共有したいと中国共産党政権に接近する国は少なくはない。ドイツやフランスも中国市場への進出では積極的だが、その欧州主要国も今回の北京の式典には距離を置いている。中国共産党政権が式典を覇権誇示の機会として利用することを知っているからだ。欧米諸国は中国とは同じ価値観を共有していないことを首脳の式典不参加でアピールしているわけだ。
韓国は北朝鮮という独裁政権と対峙している。軍事衝突がいつ起きても不思議ではない。それゆえに、中国に接近し、北朝鮮を包囲したいといった戦略的な狙いは理解できるが、韓国にとって生命線である対米関係をこじらせる危険性が出てくる。そのような冒険を犯してまで中国の式典に参加する意味があるのか。
朝鮮半島で軍事衝突が生じた時、韓国を守ってくれる国は中国共産党政権ではなく、米国だろう。朝鮮動乱(1950年6月25日~53年7月27日)を想起するまでもないことだ。韓国軍は侵攻する中国人民軍と死闘した体験を忘れることはできないはずだ。
朴大統領が習近平国家元首との会談で、朝鮮動乱時の中国人民軍の蛮行への謝罪を要求し、法輪功の信者たちへの臓器摘出・不法売買といった非人道的な犯罪を即中止するように直言出来れば、日本や欧米諸国は「さすがに朴正煕元大統領の娘だ」と同大統領を見直すだろうし、米韓日の結束を高める絶好の機会ともなる。これは習近平国家主席の「中国の夢」ではないが、少なくとも「当方の夢」だ。
(ウィーン在住)