開明的イスラム指導者に期待
地球だより
エジプトの首都カイロに赴任して以来十数年を経たが、国民の9割を占めるイスラム教徒との付き合いを通じ、過激派ではない一般のイスラム教徒でも大きく三つの問題を持っていることに気付く。
その第1は、信教の自由がないことだ。父親がイスラム教徒の子供たちは全員、自動的にイスラム教徒になり、改宗は許されない。改宗は死に相当する。だから時々、「イスラム教徒がキリスト教徒になった」として、血相を変えて取り戻そうと奮闘する“戦い”の話を聞き、記事を見る。
第2の問題は一夫多妻を容認していることだ。愛の誓いは決まって、「あなただけを、絶対に、永遠に愛します」であるように、「愛は唯一、絶対、永遠」であるべきだが、一夫多妻は愛の本質を根底から覆すものとなる。このことは女性の人権をおとしめかねず、性奴隷をも正当化させる危険性を内包する。複数の妻の間でのゴタゴタを耳にすることもある。
第3の問題は、イスラム教徒は「イスラム法(シャリア)を絶対視し、イスラム法に固執し、イスラム国家・世界を指向する傾向を持つことだ。イスラム法は聖典コーランと、預言者ムハンマドの言行録であるハディースから導き出されるゆえに、神の命令そのものであることから、永遠に絶対視され、変えることが許されない。文字に固執し、厳密になればなるほど、現代から見れば時代錯誤的な斬首や手足の切断、鞭打ち、投石による惨殺が正当化され、偶像崇拝禁止は歴史遺産の破壊にたどり着く。
近年中に世界一の信徒数を持つ宗教となるだけに人類全体に及ぼす影響力は甚大だ。開明的なイスラム指導者の出現が待たれるところだ。
(S)