悲惨なフィリピンの鉄道事情


地球だより

 先日、国鉄の列車が脱線して、先頭車両がほとんど横転に近い状態になる大きな事故があった。現地のニュースによると、少なくとも80人が負傷したという。

 脱線の原因は線路の不具合とみられているが、その不具合の原因というのが、線路を固定する金具の盗難らしい。しかもこの盗難というのが日常的に行われていて、国鉄当局も把握しているが、予算の関係で線路全域に監視員を配置することもできず、発見したら修理するということを繰り返しているという。

 線路は周辺の地域と仕切られていない地域が多く、誰でも立ち入れる状態で、暗い時間に金具を盗んだりすることは容易なようだ。国鉄当局は列車の運行前に線路の状態を確認しているが、今回の事故を受けて、さらに確認する回数を増やす方針だという。犯人は盗んだ金具を鉄屑(てつくず)屋に売っているとみられている。

 幸い列車は普段からノロノロ運転なので、この程度の事故で済んだが、生活のためとはいえ、多くの乗客を危険にさらす行為が横行しているというのが、ちょっと信じられない。

 日本でも線路に置き石する事件があったりするが、かなり厳しく罰せられる。線路の金具の盗難は、それよりさらに事故に直結する可能性がある危険な行為だが、それにもかかわらず、犯人捜しについてはほとんど話題になっていない。脱線事故を招く金具の盗難が日常化していること自体が異常だと思うが、なかなか根本的な解決は難しいようだ。

(F)