参戦兵士の「名誉の飛行」 米国から
地球だより
第二次世界大戦を戦った退役軍人12人を乗せた6機の小型飛行機が、米中西部オハイオ州から首都ワシントンに向けて飛び立ったのは、2005年5月のことだった。
ワシントンに第二次世界大戦記念碑が完成したのは、終戦から60年近くが経過した2004年。参戦兵士たちはこの時点で既に高齢で、健康問題や金銭的理由から記念碑を一度も訪れたことのない人が多い。
生きている間に記念碑を見させてあげたい――。オハイオ州の医療施設で働くアール・モースさんが中心となってボランティアのパイロットを集め、年老いた退役軍人たちを無償でワシントンに案内した。
「名誉の飛行」と名付けられたこの事業は、全米に拡大。航空会社の支援もあり、昨年末までに10万人近い退役軍人がワシントンを訪れた。
先月、筆者がワシントン近郊のロナルド・レーガン空港で飛行機の搭乗時間を待っている時、ちょうど「名誉の飛行」で到着した退役軍人たちに出くわした。
彼らを熱烈に歓迎したのは、関係者だけではない。その場にいた全ての一般乗客が惜しみない拍手を送り続けた。退役軍人のほとんどが車イスだったため、全員降りてくるのに30分以上かかったが、拍手が途絶えることはなかった。
米国では戦争の是非にかかわらず、国家のために戦った兵士に敬意を表すのは当然とのコンセンサスがある。これに対し、我々日本人はどうか。
筆者も他の乗客とともに拍手を送ったが、「日本を守るために戦った方々に、これほど熱烈な敬意を表したことがあっただろうか」と思った時、恥ずかしい気持ちがこみ上げてきた。
(J)