寝釈迦の足の裏
地球だより
タイ観光客が必ずといっていいほど訪れるのは、メナム川沿いの暁の寺とワット・ポーだ。
アユタヤ時代からの古刹ワット・ポーは、菩提樹の寺の意味だ。全長46㍍の黄金色に輝く涅槃(ねはん)仏は必見だが、見逃してはならないのは足の裏だ。さまざまな文様と仏が彫られ仏教の世界観を表しているという。
なおワット・ポーで異色なのはタイ古式マッサージの学校があることだ。今でも多くのタイ古式マッサージ師を目指す人が、ここで学び資格を取っている。
ワット・ポーがタイマッサージの殿堂になったのは、タイの伝統的な学問知識を結集する最初の大学でもあったからだ。
現在の講習所は1962年に開設されたもので、東側の休憩亭で講習を行っている。受講できるのはルーシダットトンと呼ばれる修行僧が編み出したとされる「隠者の体操」と薬草マッサージで、タイ人のみならず外国人も多数、受講している。
ここでは受講だけでなく、1時間コースとか2時間コースのタイ古式マッサージを受けられる。タイ古式マッサージの特徴は、全身をもみほぐすというのではなく、圧倒的に足中心のマッサージだ。
日本文化が手の文化だとしたら、タイは足の文化だ。仏教的宇宙観をも示唆するワット・ポーの寝釈迦(しゃか)の足の裏だが、その精神はタイ古式マッサージにも脈々と受け継がれている。
(T)