象の背に乗る


地球だより

 タイの首都バンコクでは時々、象がノッシノッシと歩いている光景を目にすることがある。交通渋滞の原因にもなるし、暴れれば何が起こるか分からない治安上の問題もあって、首都圏への象の侵入を当局は禁じているが、それでもおきて破りの象使いは後を絶たない。その多くは出稼ぎ組だ。昔は森のブルドーザー役として、仕事もそれなりにあったが、今では重機やトラックが取って代わり、就労機会が極端に減ってきている。今ではスリンの象祭りなどが典型で、観光客相手の稼ぎで細々、食いつないでいる格好だ。

 それでも時期を間違えると、象の野性を抑えることは難しく、事故が発生する。

 16日には南部の象園で、ロシア人女性とその娘を乗せたゾウが暴れだし、タイ人の象使いが牙で突かれ死亡する事故が発生した。象はロシア人母娘を乗せたまま走り去り、森に逃亡した。警察などが追跡し、森に逃げ込んだ象に麻酔弾2発を撃ち込んだ。そうして、おとなしくさせた後、別の象使いが象に飛び乗って取り押さえ、母娘の保護に成功している。

 結局、母娘は保護されるまで、象の上で約2時間半を過ごした。

 「騎虎」とは虎の背に乗る意味だが、ロシア人母娘は暴れる象の背に2時間半もの間、くぎ付けにされた。降りれば怒り狂う象の犠牲になりかねず、「騎虎」ならぬ「騎象」を強いられたのだ。

(T)