ハイブリッド留学
都内の某私学大学が“ハイブリッド留学”なるものを始めた。英語の“ハイブリッド”とは、異なる種のものを組み合わせたものを意味する。何がハイブリッドかと言えば、日本で行っている授業をそのまま現地で日本語で行い、英語はホームステイしながら習得するというもの。従来の留学と違って、高い英語力を前提としない。言わば、キャンパスをそのまま海外につくったようなもの。
まずは海外に出て、そこで学び・生活することから始めて、英語力や海外で生き抜く力も身に付けて卒業してもらう。まさに逆転の発想だ。思いを持ちながら、言語の壁であきらめていた若者に、海外で学ぶチャンスを広げたという意味では画期的だ。少子化時代の大学戦略としても、他大学からも注目されているという。
しかし、ここまでハードルを低くし、海外に学生を飛び立たせる必要があるのだろうか。これを留学と呼べるのか。語学試験をクリアーして入学許可証を手にし、言語の壁と格闘しながら学んだ学生から見れば、留学の価値が違うという話になろう。
文科省は「トビタテ!留学JAPAN」と旗を振る。2020年留学倍増に向けて官民で始めた海外留学支援制度では、月12~20万の奨学金に加えて渡航費が給付される。
高い留学費用と語学力、二つのハードルは年々低くなってきた。しかも留学先はほとんど欧米の英語圏だ。至れり尽くせり、温室育ちの海外留学を「アームチェア留学」と揶揄(やゆ)する声も聞こえる。
これから日本企業が進出していく地域は豊かな先進諸国だけではない。インド、インドネシアなどアジア圏やアフリカ諸国など途上国が多いのだ。世界に出て行くためには、ハイブリッドな車よりも舗装されていない悪路でもしっかり走りきれる、とにかくタフな車でないといけない。(光)