エボラ出血熱の迅速な診断を


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エボラ出血熱対策で貢献するIAEA

 反原発を主張する人々は原子力発電事故が如何に怖いか、放射線の汚染からテロ襲撃の危険まで挙げて説明する。そして、脱原発、再生可能エネルギーの促進を要求する。それは一つの見解だが、原発開発、それに伴う核関連技術の発展はがん治療など様々な医療分野で人類の福祉に大きな貢献をしてきていることを忘れてはならないだろう(「IAEAのHPが変った」2010年6月19日参考)。

 核エネルギーの平和的利用を促進する国際原子力機関(IAEA)がアフリカなど開発途上国に対し、マラリア対策からがん治療までその核エネルギーを利用した医療技術で支援している。天野之弥事務局長は「IAEAの仕事はイラン、北朝鮮などの核保障協定(セーフガード)とその検証問題だけではない、がん対策でも大きな貢献をしている」と指摘し、核エネルギーの平和利用の実態に対する国際社会の認識不足を嘆いている。
 
 IAEAは14日、プレスリリースを発信し、「IAEAが西アフリカのシエラレオネに猛威を振るっているエボラ出血熱(EVD)の迅速な診断を下せる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)関連技術の利用促進を支援していく」という。
(ウィキぺディアによると、RT-PCRとは、リボ核酸(RNA)を鋳型に逆転写を行い、生成された相補的DNAに対してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法をいう)

 その直後、世界保健機関(WHO)は14日、西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱について「感染者の数が今後急増し、1週間あたり1千人から、12月上旬には5000人~1万人と拡大していく恐れがある」と警告したばかりだ。

 IAEAと国連食糧農業機関(FAO)は連携して核関連技術を利用したRT-PCRの開発に努力してきた。この技術を利用すればエボラ出血熱のウイルスの有無を数時間で診断できるという。従来のやりかたでは診断が下されるまで数日間がかかった。迅速に診断できるようになれば、感染者の生存率を改善し、もちろん犠牲者の増加を防止できる。

 エボラ出血熱が拡大するシエラレオネや西アフリカ諸国の医療関係者は一部RT-PCRを利用しているが、「診断装備や医療器材不足に悩まされ、迅速な診断が難しく、誤診にもつながっている」(IAEAのプレスリリース)という。そこでIAEAは、RT-PCR機械、冷却システム、生物安全機材、診断装備などをシエラレオネなど感染国に供給していく予定だ。

 天野事務局長は「核関連技術の平和利用はIAEAの主要職務だ。その目的のため加盟国と連携して努力してきた。今回の支援はささやかなものだが、エボラ出血熱対策で効果的な貢献を果たすと期待している」と述べている。

(ウィーン在住)