バンコクに吹く一陣の風
地球だより
タイの首都バンコクでは、スクーンビット通りなど繁華街なのに、ペンペン草が生えている空地が目立つ。隣には高層ビルが建っている所もあるにもかかわらずだ。
しかも、5年、10年たってもそのままというケースが少なくない。
理由は簡単だ。タイには相続税と固定資産税がない。
わが国では、「土地は3代で消滅する」とよく言われる。資産家であっても3代相続すると、2回相続税を払わなくてはいけないため、土地を手放さなくてはいけなくなる、という意味で使われるものだ。
その点、タイには相続税がないため、資産相続するために手持ちの土地を売却する必要性がない。さらに固定資産税もないため、土地をいくら放っておいても税金を納める必要がない。子孫が困った時に処分したり、高値になるまでじっくり寝かせておく時間的余裕が生じるのだ。
こうした資産家優遇の税システムが今日まで続いてきたのは、国会議員や高官の多くが庶民と懸け離れた富裕層だったからだ。国家統治の実務を預かり、法制度改革の責任を持つ政治家や高官が、自分たちの都合の悪いことに手を付けるほど、倫理観は高くない。
それがタイ軍事政権トップのプラユット首相はこのほど行った施政方針演説の中で、年内の相続税と固定資産税導入を公約した。
プラユット首相は暫定国会の議員の過半数に及ぶ身内の軍人や警官を充てており、軍政パワーで押し切る構えだ。
プラユット首相が遠望しているのは、タクシン派をバックアップしている農村住民の取り込みだ。
(T)