ローマ法王は狙われていたのか
ローマ・カトリック教会最高指導者フランシスコは21日、欧州の最貧国だったアルバニアを訪問した。フランシスコ法王にとってはイタリア国内以外では初めての欧州訪問となった。
アルバニアは冷戦時代、ホッジャ労働党政権(共産政権)が1967年、世界で初めて「無神国家」を宣言した国だ。同国は1990年、民主化に乗り出した後、宗教の自由は再び公認された。同国では国民の間で宗教に関する関心が高まってきている反面、長い共産主義教育の影響は社会の各方面で見られる。
同国ではイスラム教が主要宗教で人口の約60%、そしてアルバニア正教徒とローマ・カトリック教会、プロテスタント教会と続く。なお、カトリック教徒数は約45万人だ。フランシスコ法王はティラナ訪問ではイスラム教徒ら他宗教との会談を積極的に行った。
ところで、フランシスコ法王のティラナ訪問は訪問直前まで国内ではほとんど報じられなかった。同国のメディアは前日になって初めてローマ法王のアルバニア訪問を大きく報じたほどだ。アルバニア政府がフランシスコ法王へのテロを恐れ、情報を抑えていたといわれる。
バチカン放送によると、アルバニア警察は法王訪問前、約50人の過激派活動家を拘束している。国内だけではなく、モンテネグロ、コソボ、マケドニアなど隣国居住の過激派に対しても拘束しているほどだ。法王の安全のためアルバニア当局は約2500人の警察隊を動員した。
それだけではない。フランシスコ法王のティラナ滞在中は携帯電話が使用できないようにしている。法王が記念礼拝をするマザー・テレサ広場でテロリストが爆弾を仕掛け、それを携帯電話で爆発させる危険性があるからだ。アルバニア側の法王へのテロ警戒は非常に現実的であり、深刻だった。多分、西側情報機関筋からティラナ側に「法王が危ない」といった情報が入っていたのかもしれない。
シリアやイラクで蛮行を繰り返すイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に対して フランシスコ法王は先日、欧米の対IS空爆を容認する発言をして注目されたが、ISはローマ法王への報復を表明しているという。
南米初のローマ法王に就任したフランシスコ法王にはこれまでも暗殺情報が何度も流れてきた。それもメディアの憶測情報ではなく、高位聖職者からの情報だ。バチカン法王庁の抜本的改革を表明してきたフランシスコ法王が狙われているというのだ(今年4月27日に聖人となったヨハネ・パウロ2世は1981年5月13日、サンピエトロ広場でアリ・アジャの銃撃を受け、大負傷を負ったことがある)。
幸い、11時間余りの短時間のアルバニア訪問は無事終わり、ティラナ市内の記念礼拝を終えたフランシスコ法王は同日夜、ローマに戻った。
(ウィーン在住)