やや涼しくなり過ごしやすい季節となった。…
やや涼しくなり過ごしやすい季節となった。秋というと「食欲の秋」や「読書の秋」などの言葉が思い浮かぶ。特に読書にはふさわしいが、その形態は電子書籍などの出現で昔とは様変わりしている。
アナログ世代には電子書籍はなかなかなじめないのだが、便利さやデータ量の多さから若い世代を中心に利用されている。紙で読むのと液晶画面ではまったく感触が違うので、慣れないと疲れる。だが、若者は指でタッチしてページをめくりながらスイスイと読んでいる。
テレビの時代劇には、武士がきちんと正座して読書するシーンがよく登場する。昔は紙が貴重だったから、書物を尊ぶ気持ちが現在よりも強かったのかもしれない。彼らが電子書籍を見たら目を丸くするだろう。
ただ、いつの時代でも変わらないのは本によって人生の知恵や感動を受けること。それこそ、一冊の本によって人生が変わることもあり得る。特に、娯楽もない極限状況だったら、なおさらに違いない。
かつて第2次世界大戦の激戦地だった硫黄島で遺骨収集に従事した人から、発見された文庫本のページの切れ端を見せられたことがある。その黄ばんだ紙を見て、これを読んだ人は戦争中も本を心の糧として過ごしていたのだろうと思った。
きょうは、詩人・童話作家の宮沢賢治や作家の宇野浩二、広津和郎が亡くなった日。秋の読書のリストに挙げたい作家たちである。