タイで女性専用車両の登場


地球だより

 タイ国鉄は8月1日から、長距離路線で女性専用の寝台車両を導入する。1編成につき1両で、乗車できるのは女性と10歳以下の男児のみとなる。車掌も女性が担当し、男性不審者の侵入をブロックする。

 タイ国鉄では今月5日、寝台車両で乗客だった中学1年生のタイ人女生徒が強姦(ごうかん)された上に殺害されて列車外に投棄される事件が起きた。犯行は男性乗務員2人によるもので、犯人は殺人、強姦などの容疑で逮捕されている。タイ国鉄総裁はこの事件の責任を取り、辞任した。

 女性専用車両の導入は、この事件の反省から生まれた措置だが、タイ鉄道旅行を愛する旅行者にしてみれば、パキスタンのバスにでも乗っているようで、ちょっと寂しい措置だ。

 パキスタンのバスには仕切りがあって、前後に男性と女性乗客に分けられている。パキスタンでは全身を覆うようなチャドルを見掛けることは少なく、穏健派のイスラム教徒が主流を占めるが、それでもかつてわが国にもあった「男女7歳にして席を同じうせず」といった感覚はまだ残っている。

 「ほほ笑みの国」タイはそもそも「自由の国」という意味だが、少数の犯罪者が人々から「笑みを奪い」「不自由な国」に押しやっている現実がある。

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