お抱え運転手の告発


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 朝鮮時代の情報通は断然、馬子だった。大鑑(テガム)(正二品以上の高官)たちの“足”となっていたので、彼らの一挙手一投足は馬子が把握していた。高官がどんな妓生(キーセン)に首ったけか、誰から賄賂をもらっているか、馬子ほどよく知る者はいなかった。宮廷によく出入りする高官たちの馬子が3、4人集まって情報交換すれば、すぐに官職異動の見通しがついた。

 現代版の馬子が政治家などVIPのお抱え運転手だ。彼らはVIPが誰と会うか、どんな内容の電話をするか、くまなく把握できる。それで情報の勘所を知る人間は官僚に接触するより先に、閣僚や次官の運転手に接近するという。検察は重大な収賄事件が起こると、被疑者の運転手を必ず聴取する。現場の周辺で札束の入ったダンボール箱を目撃した可能性が高いからだ。信じていた運転手に裏切られた政治家は一人や二人ではない。

 崔時仲(チェシジュン)・元放送通信委員長が㈱パイシティー代表から8億ウォン収賄した事実は、ブローカー李某氏の運転手によって暴露された。その運転手は崔元委員長に現金の包みの写真を同封した脅迫状を送って現金2億ウォンを奪い取っていた。玄永姫(ヒョンヨンヒ)元セヌリ党議員が公認候補選びで5000万ウォンの現金を渡したことを選管に告発したのも運転手で、彼は3億ウォンの褒賞金をもらった。洪思徳(ホンサドク)議員が実業家から不法政治資金を受け取ったことを告発した実業家の運転手は褒賞金2億ウォンをもらった。

 運転手たちの裏切りは正義感だけでは説明できない。最大5億ウォンの褒賞金欲しさと雇い主に対する不満と恨みが複合的に作用した結果であるはずだ。セヌリ党の朴商銀(パクサンウン)議員の運転手が同議員の不法政治資金授受疑惑を提起した。朴議員の車の中にあった3000万ウォンの現金と書類を盗み出して検察に提出し、不法政治資金かどうかを捜査してほしいと要請したのだ。

 朴議員は出版記念会の時に入ってきたお金だと釈明したが、“黒い金”疑惑は拡大する趨勢(すうせい)だ。同じ後ろめたさのあるVIPたちが枕を高くして眠れなくなった。運転手に恨みを買ったことはないか反省するかもしれない。それでも不安なら、家族や親族を運転手にするか、自分が運転するかの対策を立てるだろう。しかし、根本的な解決策にはなり得ない。運転手の裏切りを心配しなくてもいいように賄賂や不正と一線を画すことこそが最善策であるはずだ。

(6月18日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。