断水の呪い


地球だより

 前回、断水の告知にもかかわらず、結局、断水が行われなかった迷惑な話を書いたが、実はあの後に数日にわたる断水に見舞われることになった。

 警備員に断水の理由を聞くと、聖週間の連休に延期になった洪水対策の工事ではなく、何とマンションに設置されているポンプの故障だった。つまり記者の住んでいる建物だけが断水に陥ったのだ。

 フィリピンのマンションには、警備員と共にテクニシャン(技術者)が常駐していて、建物の水回りや電気関係を管理しており、いつもならすぐに修理できるはずだった。しかし、こんな時に限って、彼は休暇でバスで片道12時間以上もかかる田舎に帰ってしまっていた。

 というのも彼は、聖週間の連休に予定されていた断水に合わせて、給水タンクの清掃を行うため休日返上でスタンバイしており、聖週間が終わった後に休暇を取ったという事情だ。何というタイミングの悪さだろう。まるで断水の呪いである。

 結局、技術者は緊急事態にもかかわらず休暇をフルに満喫し、彼が帰ってくるまで約5日間断水は続いた。マンションの住人は地下にあるトイレの水道から、自分の部屋まで毎日バケツで水を運ぶという苦行の日々が続いた。

 それでも「台風の洪水で1週間以上も停電と断水が続いた時よりはまだマシ」と思えたのは、現地化がかなり進んでいる証拠かもしれない。この国で生活を続けるには、いかにストレスを抱えないかが重要である。

(F)