聖職者の独身制と性犯罪は無関係?
駐ジュネーブのバチカン法王庁外交代表部は6日、国連拷問禁止委員会の定例審査で、聖職者による未成年者への性的虐待件数が過去10年間で3420件だったという報告書を提出した。同件数は教理省に通達された事件だけを計算したもので、「実数はもっと多い」(バチカン消息筋)と予想されている(駐ジュネーブのバチカン代表部のシルバーノ・トマシ大司教(Silvano Tomasi)によると、聖職者の性犯罪は主に1950、60、70、80年代に発生したものという)。
年別にみると、2004年は713件、05年184件、06年218件、07年216件、09年196件だったが、2010年から464件、11年402件、12年418件、13年401件と倍増している。アイルランド、ドイツ、オランダ、オーストリア、ベルギー、米国など世界各地で聖職者の性犯罪が次々と発覚した時期と重なる。
848人の聖職者が2004年から13年の間、聖職を剥奪され、2572人は他の刑罰を受けた。
ローマ・カトリック教会はこれまで聖職者の性犯罪の犠牲者に対して25億ドルを支払ってきた。その他、7800万ドルは犠牲者の治療に使われたという。もちろん、それらの資金は世界の信者たちの献金によって賄われていることはいうまでもない。
トマシ大司教はバチカン放送とのインタビューの中で、「カトリック教会の在り方が未成年者への性的虐待を促進させている、といった非論理的で、事実でない話が広まっている。職業別の性犯罪率で比較すれば、聖職者の性犯罪率は低い」と弁明し、聖職者の独身制と性犯罪とはまったく関係がないと示唆している。
なお、バチカン法王庁のロンバルディ報道官は「バチカンの信頼性を意図的に崩そうとする動きがある」と国連拷問禁止委員会を暗に批判している。
(ウィーン在住)