定年後を生き抜く術ー韓国から


地球だより

定年

 60歳の定年で長年勤めた職場を退職した知人に久しぶりに会った。毎日どうしているかと思って尋ねると、「午前中、1万歩歩くのが日課」だという。彼の自宅はソウルを東西に流れる漢江沿いのマンション。川沿いに整備された遊歩道を中心に2時間ほど歩き、そのまま外で昼食を済ませてから帰宅している。自分に1日3食準備する妻の「煩わしさ」を考え、昼くらいは「解放」してあげねばという親心ならぬ“夫心”なのだそうだ。

 知人の場合は60歳だが、大企業などでは55歳定年も珍しくない。50歳にもなれば窓際に追いやられ、早期退職するケースも多いようだ。韓国は平均寿命の伸びや医療の進歩で定年後の人生が長くなった。このままいけば全人口に占める高齢者(満65歳以上)の割合は、あと20年余りすると日本を追い越し、世界一になる可能性がある。リタイアしても終活するには早過ぎる。韓国の夫たちにとって定年後の人生設計は頭の痛い問題だ。

 「老後資金、健康管理、孤独との闘い」(韓国メディア)が定年後の夫たちに降り掛かる課題と言われるが、それだけではなさそうだ。実は一番難しいのは夫婦仲をどう維持するかだと指摘する向きもある。「無条件、妻の言うことに従うのが秘訣(ひけつ)」(前述の知人)という話をよく聞くが、あながち的外れではなかろう。筆者とて他人事(ひとごと)ではないのだが、外であれほどバリバリ働いていた知人が家の中では小さくなっている姿を想像するだに微笑ましくなる。(U)