トラの字を冠するも…ー韓国から
地球だより
こちらでは1月1日からちょうど一月遅れで「ソルラル(旧正月)」を迎え、名実ともに年が明けた。今年の干支(えと)は「寅(虎)」。この字を見ると思い出す大先輩の韓国人記者がいる。愛称は「タイガー李」。眉毛が吊(つ)り上がり目はギョロリとして、最初は強面(こわもて)の印象からこの名が付いたと勝手に思い込んでいたが、名前の漢字表記の一文字が「寅」で、そう呼ばれていると後で聞いた。晩年、名物コラムニストとして後輩たちから慕われた。
ところで、虎は朝鮮半島と何かとゆかりがある。古朝鮮建国にまつわる檀君神話には、始祖・檀君誕生をめぐり父の桓雄、虎、熊が登場する。そして何よりかつて半島各地に虎が生息していた。今も時々、「加藤清正の虎退治」のせいで、はたまた「日本が統治時代に毛皮を戦利品として持ち帰るため大量に捕まえた」ので、絶滅したという話を耳にする。だが、実際は19世紀の朝鮮王朝末期まで生息し、しかもその頃すでに絶滅寸前だった。
虎は土着信仰とも結び付き、「山神」として畏敬の念を抱く存在でもあったようだ。その一方、昔の絵画に登場する虎は荒々しい猛獣としての姿よりは、どこか謹厳な表情やユーモラスな笑みを浮かべているものが少なくない。
任期末となった現職大統領の名前にも「寅」の字が付いているが、韓国では名前の漢字表記自体あまり知られていない。そのため「はて、名前負けしないような仕事ぶりだったのか」と追及される心配もない(?)。(U)