足並みそろわぬ旅行規制ーフィリピンから


地球だより

 コロナ禍で海外観光客が見込めないフィリピンでは、国内旅行を活性化させて経済を回そうという試みが行われている。その一環として政府は、州をまたぐ旅行に必須だったPCR検査や許可証を全国的に撤廃すると発表した。

 この旅行要件はフィリピンから帰国する外国人にとっても鬼門的な存在だった。特に地方在住で最寄りの空港から直行便がない外国人は、マニラ首都圏の空港まで行くことになるが、その際に必要なのが旅行許可証やPCR検査の陰性証明書だ。

 問題なのは陰性証明書で出発前の72時間以内という縛りがあり、フライトが変更されたりキャンセルされたりした場合、使えなくなってしまう恐れがある。これが撤廃されれば、手続きの煩雑さから帰国をためらっていた外国人も選択肢が増えるだろう。

 しかし問題なのは、PCR検査の撤廃の権限は、最終的に地方自治体に委ねられているということだ。さっそく観光地として有名なボラカイ島は、これまでと同じく観光客には陰性証明の提示が必要だと念を押した。地方には大きな病院がなく容易に医療危機に陥るため、首都圏より規制が厳しい傾向がある。

 このような例外が各地で発生すれば、旅行者は混乱し以前よりも面倒な確認に追われる羽目になりかねない。政府にはもっと指導力を発揮してほしいところだ。

(F)