観光鎖国でサバイバルータイから


地球だより

 タイは新型コロナウイルス封印に成功したかに見えていた。だが最近、感染者急増の趨勢(すうせい)にある。年間4000万人近くが訪問し、7兆円ほどの観光収入をはじき出すタイの観光産業の苦しみは、まだまだ先が見えない状況だ。

 本来、雨季明けの11月、12月はかき入れ時だ。この季節は日本の初秋のような過ごしやすさで、欧米や近隣諸国からもどっと旅行者が訪れたものだ。

 だが今年はどこも閑古鳥が鳴いている。とりわけホテルの稼働率は、前代未聞の20%前後。閉鎖を余儀なくされたホテルも少なくない。政府は10月から観光客の受け入れを段階的に再開しているものの、旅行者には自己負担による14日間の隔離が求められ、「観光鎖国」長期化は必至の状況だ。

 生き残りを懸け、国内客取り込みに動くホテルもある。タイでは3月下旬から「ドル箱」の外国人観光客がほぼ途絶えているのだから、サバイバル戦略はそれしかない。手っ取り早いのは、値下げだ。五つ星ホテルのマリオットは1泊1212バーツ(約4120円)のプランを提示。普通だと3万円台の部屋が、二つ星程度の値段だ。

 また、ハイアットは100万バーツ(約346万円)の年間宿泊プランを発売し、国内富裕層に向けた売り出しを開始した。1年間分のホテル宿泊だけでなく、私立病院での健康診断や高級ショッピングモールのラウンジ利用権といったおまけが付く。ホテル側の宣伝によると、1000万円分のサービスを3分の1の料金で享受できるという。

(T)