人工ビーチ事業に賛否ーフィリピンから


地球だより

 フィリピン政府がマニラ湾で造成を進めている人工ビーチに賛否の声が寄せられている。批判の多くはコロナ禍の中でビーチなどに予算を使うべきではないという意見や、自然破壊に繋(つな)がるという内容だ。

 人工ビーチは米国大使館の敷地に隣接するマニラ湾の堤防沿いに造成された。ドロマイトと呼ばれる岩石を砕いた人工の白い砂を敷き詰めたもので、約4億ペソ(約8億6000万円)が投じられ、さらに拡大される予定となっている。

 事業を推進する環境天然資源省は、コロナ禍前の昨年の時点でマニラ湾浄化事業の一環として計画が始まったと説明し、人工ビーチの予算をコロナ禍に振り分けるべきとの批判は的外れだと反論。また、ドロマイトによる環境破壊や健康被害の懸念に対しても、海外のビーチでも使用されているとして安全性を強調した。

 批判の声もあるが市民の関心は高く、純粋に珍しい景観を喜ぶ声も多い。ビーチが一般公開された日には早朝から多くの見物客が詰め掛け、ソーシャルディスタンスが無視されるほどの熱狂ぶり。警備を担当していた警察署長が群衆を制御できなかったとして解任されるほどの騒ぎだった。

 筆者も実際に見物に行ったが、踏み固められた白砂はビーチというより運動場のような印象だった。それでもコロナ禍でほとんどのレジャー施設が閉鎖される中、庶民の目を楽しませることができたのなら、一定の効果はあったと言えるのではないだろうか。

(F)