健康志向に商機ありータイから
地球だより
タイ赴任時、バンコクは日本食ブームに沸いていた。回転寿司だけなく、和食レストランは目白押しだった。コンビニにはラップに包まれた握り寿司もあった。
ただ、緑色のペットボトルに入った緑茶には驚かされた。タイの緑茶には砂糖が入っていて、甘いのだ。
健康志向が日本食ブームに火を付けたはずなのだが、糖分だけは外せないらしい。タイ人にとって飲み物は甘くないといけないという固定観念にも似たものがあった。
これには労働事情も絡んでくる。暑い最中、農作業や水産など肉体労働に携われば、疲労回復には糖分と塩分補給は必須条件となるからだ。
だが、タイの労働事情も大きく変わり、ブルーカラーは減少し、事務職のホワイトカラーが急増した。このため最近は、炭酸飲料でも糖分カットのものも出てくるようになった。
さらに9月には、糖分カットの果汁100%ジュースも登場し、テスト販売の限定個数ながら完売するなど話題になった。
開発したのは、大学に拠点を置くスタートアップ企業。6年の歳月をかけ、100種類以上の微生物を活用したバイオ技術の開発に成功した。
果汁の旨(うま)味はそのままに、糖分やカロリーだけを取り除くのだが、50%や100%といったカット率も自由に変えられる技術が売りだ。微生物の組み合わせを変えることで、カット率を自在にコントロールできるという。
ビタミンとミネラルが詰まった旨味はそのまま、糖分やカロリーだけを減らすという健康志向ジュースが、上手(うま)いビジネスになるか。これからが正念場だろう。
(T)