オンマ・チャンス


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 ローマ教皇フランシスコはぴたりと当たる予言者だ。ちょうど1年前、教皇はアフリカの公開ミサでこう叫んだ。「善悪の判断基準として“家族”を掲げる時、特権と腐敗を正当化するわなに陥るようになる」「家族の困窮と他人の困窮を違う物差しで見る人は、けっして聖書の教えに従う人とは言えない」。自分の家族の富と慰安を優先する特権層の選民意識をとがめたのだ。まるで今日の韓国の事態を見通していたかのようだ。

 国中を騒がせた秋美愛法務長官の息子の“皇帝兵役”論議も的外れの家族愛が原因だ。カトゥサ(KATUSA=在韓米軍に増強された韓国陸軍要員)だった息子は何回も“オンマチャンス”(母親の権威・財力を利用すること)を使った。息子が勤務した部隊には権力層からの請託電話が殺到した。「ソウルの竜山に配置してほしい」「平昌冬季五輪の通訳兵に選んでほしい」。息子は服務中に58日も休暇を取ったが、そのうち19日は病気休暇の記録すらない。病気休暇の期間が終わった後も軍に復帰しなかった。休暇処理は事後に隠れて行われた。陸軍本部の大尉が直接部隊に来て、休暇を取ったそうだ。その当時、息子の母親は政権与党の代表だった。小川にすむフナやカエルにとっては、本当に“小説のような”話だ。

 (朴槿恵)大統領の弾劾にまで発展した崔順実スキャンダルも、オンマチャンスが禍根だった。母親は乗馬特技生の娘のために財閥を動員し、教授に暴言をはいた。歴史は繰り返すものだ。

 曺国元法務長官は“アッパ(父親)チャンス”を使ったことで長官辞任に追い込まれた。娘の入試のために偽のインターン証明書と偽の賞状を作ったことが露呈したためだ。それにもかかわらず支持勢力はソウルの瑞草洞(最高裁や大検察庁=最高検=がある司法府の中心地)に押し寄せて“曺国守護”を叫んだ。それがこの地で起こった曺国スキャンダルの素顔だ。

 “正義の女神”テーミスはいつも自分の両目を布で隠している。地位や身分、縁故によらず公正な決定を下すためだ。法務長官はこのような崇高な正義を守る機関の長だ。自分の子供のために反則を犯す人間は、正義の守護者になる資格がない。教皇の教えを借りるならば、こうなるはずだ。「家族の困窮と他人の困窮を違う物差しで見る人は、決して正義に従う人とは言えない」。

 (9月8日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。