マンゴーに亡き人を思うーイスラエルから
地球だより
8月の半ばを過ぎて、ひどく暑かった毎日も朝晩には過ごしやすくなってきた。日本にいればお盆の季節なので、自分の親族のお墓参りの代わりに、昨年ご主人を亡くした友人を訪ねた。
花と一緒に、ご主人が何が好きだったか分からなかったので、お店で一番目に付く、おいしそうな果物を買った。
汗をかきかき歩いていくと、友人は庭に出て待っていてくれた。1年ぶりだった。
ユダヤ人は、人が亡くなるとその日のうちに土葬する。その後シヴァと呼ばれる1週間、残された家族の元を親戚、友人、隣人が訪れ、常に誰かが家族に寄り添い、その痛みを共有するのだ。また、家族は1年間喪に服し、祝い事に出席できない。
友人に日本のお盆の習慣を話して、自宅で写真の前でお参りさせてもらった。
その友人は、人が亡くなると1年間は魂がそのまま地上に残っていると信じているそうだ。友人は娘と共に部屋の中で、ご主人の息遣いを聞いたり、夜中にテレビが勝手についたりしたので、やはり姿は見えなくても自分の近くにいると感じているそうだ。
彼女は、私が写真の前に花を飾ったり、果物をお供えして手を合わせたりするのを興味深く眺めながら、「主人は、マンゴーが大好きだったのよ」と言って涙をこぼした。
そう、私が選んだのは華やかな色と甘い香りがするマンゴーだったのだ。
思い出話を1時間ほど聞いて、友人の家を出た。55歳の若さで逝ってしまった友人のご主人。マンゴーを選んで良かったと思いながら、帰途に就いた。
(M)