バイクの「シールド」論争ーフィリピンから


地球だより

 ソーシャルディスタンスの維持が無理なバイクの二人乗り。フィリピン政府は二人乗りを認める条件として、ライダーと乗客の間にアクリル製の「シールド」を設置することを義務付けたが、安全性や効果に対し批判が集まっている。

 フィリピンでは新型コロナウイルス対策に伴うロックダウンで公共交通機関の停止と限定的な再開を繰り返しており、通勤者にとってバイクは貴重な移動の手段となっている。政府は同居している夫婦やカップルを対象に、感染対策としてシールドを使用することで二人乗りを解禁した。

 しかし、家庭内で一緒に過ごしているのにバイク上でシールドが必要なのはおかしいという意見や、ライダーがリュックのように背負うかたちで使用するシールドは、空気抵抗が大きくバランスを崩す可能性が懸念されるなど批判が殺到した。

 このほど、政府はようやく重い腰を上げ、夫婦や同居人に限りシールドは不要との判断を下したが、乗員は同居や婚姻を証明する何らかの書類が求められる。

 ネット通販では二人乗り用のシールドが雨後の竹の子のように大量に販売されていたが、政府の二転三転する判断のせいで無用の長物と化してしまった人も多いようだ。依然として同居人ではない乗員との二人乗りには障壁が必要だが、需要が激減したのは確実だ。

 コロナ禍が去った暁には、ウイルスの混乱が招いた負の産物として博物館に飾られる日が来るかもしれない。

(F)