森林火災で避難する鳥たちーブラジルから
地球だより
ブラジル中西部、パラグアイとの国境近くにある世界最大の湿地帯で、世界自然遺産として知られるパンタナール。最近、パンタナールの近隣都市で普段は見掛けない鳥を見掛けることが多くなったという。
その理由は森林火災だ。通常、森林火災のピークは乾期の7月から9月になるが、すでに史上最悪と言われた昨年を上回るペースで火災が発生している。
先週には、パンタナール地区最大のホテル「SESCパンタナール」近くにまで火災が迫り、従業員が避難する騒ぎにまで発展した。現地政府は非常事態宣言を発令、消防隊のほかに国軍が出動して、陸と空から消火を試みているが、想像以上の乾燥と強風に苦しんでいるという。
当然のことながら、火災に巻き込まれて焼け死ぬ動物が増えているほか、餌場や水場を奪われた多くの鳥たちが、餌や安全な場所を求めて近くの都市に向かうケースも出ている。パンタナールでガイドをしている知人によると、近年、違法伐採による森林減少で数百㌔離れた都市でもコンゴウインコやオオハシを見掛けることが多くなったという。
加えて、最近では、それらの都市でこれまで見ることがなかったような鳥や動物まで出没するようになり、森林火災の深刻さが伝わってくるというのだ。森林火災の煙害は数百㌔先の都市にも届いており、新型コロナの流行も加わって、病院は呼吸器系の異常を訴える患者が絶えないとも。
森林火災の原因の多くは、違法に牧場や農場を造るための野焼きが原因だ。掛け替えのない世界の遺産を失う前に毅然(きぜん)とした対応を願うのは記者だけではあるまい。
(S)