ペット検事


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 今年1月8日夜、秋美愛法務長官は青瓦台(大統領府)の蔚山市長選挙介入疑惑と、柳在洙前釜山市副市長の検察もみ消し疑惑事件を捜査した尹錫悦検察総長(検事総長に相当)の核心側近を左遷する人事を断行した。当時、韓東勲大検察庁(=大検、最高検に相当)反腐敗・強力部長は閑職の釜山高検次長に、朴チャノ大検公共捜査部長は遠く済州地検長に追いやられた。いわゆる“水曜日夜の大虐殺”だ。すると青瓦台に向かっていた検察捜査の動力はガタ落ちした。

 秋長官は先週の検察高官人事で、現政権と近い李成尹ソウル中央地検長の下の第1,第3次長を核心要職である大検の公共捜査部長と反腐敗・強力部長に抜擢(ばってき)した。“チャンネルA記者強要未遂疑惑”事件の捜査チームを間違って指揮し、“KBS録音記録をめぐる誤報論争”に巻き込まれた監察対象なのに、むしろ昇進して政権捜査を指揮するのだ。秋長官は人事を行った後に、「今こそ検察で“誰々の師団”という言葉は消えなければならない。最初から特定ライン・特定師団のようなものは過ち」だと語った。しかし、新しい“秋美愛師団”が、生きている権力捜査を最初から封鎖するだろうとの憂慮が大きい。

 検事出身の金雄・未来統合党議員は今度の人事を見て、「政権の手先、権力の機嫌取りが唯一の経歴である“ペット検事”たちが勢力を得る世の中になった」と叱咤した。「それでも地位にこだわらず、権力の横暴にも屈しない検事たちがもっと多い。オオカミは餌を食べない」とも述べた。“汝矣島(政界)の死神”として有名な文燦晳光州地検長は辞表を出し、「戦国時代の趙は、人材がなくて長平の戦いで大敗し40万の大軍が生き埋めにされたのだろうか」と述べつつ、「狭量で無能な君主が、無能な将帥を登用した誤った用人術のため」だと直撃弾を食らわせた。

 検事たちはとりわけ人事に敏感だ。それで通常は検察の人事を見て人事権者のメッセージを読み取る。いくら捜査がうまくても政権ににらまれる検事は出世から遠ざかる。政権と結託した検事が勢力を得れば、それだけ検察権誤用の危険が大きくなる。それによる被害は国民が被る。“生きている権力”の捜査を避けるペット検事を願う国民はいない。青瓦台と法務長官が検事の人事権を掌握している限り、真の検察改革は遥か遠い先のことと知るべきだ。

 (8月10日付)

(当記事のサムネイルはWikipediaから引用いたしました)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。