隣国内戦が影響した銃社会-タイから


地球だより

 タイは米国同様、銃社会だ。人口6900万人に対し、銃の数は1000万丁とされる。
 徴兵制のあるタイでは、男性の多くは銃の扱いには慣れている。ただ、銃所持となると免許制となっており、日本での猟銃同様、合法的所持は当局の管理下にある。

 その銃は銃砲店で購入する際、20万円以上と高価だが、男の象徴として人気だ。免許を取るには、所得証明や職業、財産、健康などの調査に半年はかかるものの、富裕層などは取得意欲が高い。一方で、不法売買されている銃は400万丁ともいわれる。価格は3万円からとピンキリだが、犯罪の7割はこうした違法銃が使われているとのデータがある。

 隣国カンボジアでは内戦が発生したこともあって、タイは合法、非合法含めた銃の流通回廊になった経緯がある。さらに最近、動画サイトに銃の作り方がアップロードされていたりもする。

 そのため実際には、1000万丁より多くの銃が国内には存在する可能性が指摘されている。ショッピングモールなどで銃撃事件が発生することがあり、今春には、東北の都市ナコンラシャシマ市で兵士が軍から盗んだ銃器を使って、町中で乱射、買い物客ら29人が死亡、58人が重軽傷を負う事件が起きた。

 これらの銃事件の報道によると、動機は仕事がうまくいかないとか夫婦仲が悪いといった短絡的な理由から犯行に及ぶケースが目立つ。仏教国タイが「微笑みの国」であるのは事実だが、一方で誰が銃を持ち出すか分からない不安が内在している社会であるのも事実だ。
(T)