1・8%成長 増税後の景気下振れが心配だ
2019年4~6月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・4%増、年率では1・8%増になり、3期連続のプラス成長となった。
ただ、中身には特殊要因もあり、力強さが戻ったわけではない。9月には米国の対中制裁関税第4弾の発動が予定され、10月には消費税増税が実施される。内外需の不安材料から景気が大きく下振れしないか心配である。
10連休で個人消費拡大
4~6月期も前期(1~3月期)と同様、平均で年率0・7%増という民間シンクタンクの予測を上回る数字となった。
成長を牽引(けんいん)したのは個人消費と設備投資で、形の上では内需主導である。実質GDPの増減に対する寄与度は、内需が0・7%プラスで、外需は0・3%マイナス。外需の寄与度マイナスは、米中貿易摩擦などに伴う海外経済の減速で輸出が減少し、また輸入が堅調な内需により伸びたからである。
内需の堅調は喜びたいが、改元に伴う4月下旬からの10連休効果という特殊要因で個人消費が拡大した面が大きく、恒常的に力強さが戻ってきたとみるのは早計である。今年の春闘での主要企業の賃上げ率が前年を下回る結果になったことは、むしろ、消費の先行きを心配させるものになっている。
設備投資は確かに、人手不足に対応した省力化投資が恒常的に見込めるものの、東京五輪関連の建設需要などの一時的な要因も少なくない。
逆に、懸念は強まりつつある。米国が対中制裁関税第4弾の発動を9月に予定し、米中貿易摩擦の激化から円相場が1㌦=105円台に上昇するなど、日本経済に新たな懸念材料が加わろうとしているからである。
円高がさらに進行するようだと、自動車や電機などの主要企業で収益の悪化から堅調な設備投資にも少なからぬ影響が出よう。従業員の賃金やボーナスにも影響は当然予想される。
そんな状況の中で、10月の消費税増税である。7~9月期は10連休効果のような特殊要因はなくなるものの、増税前の駆け込み需要から堅調さはある程度維持できようが、問題は10月以降である。
政府は過去の経験から、増税による景気腰折れ懸念に対しポイント還元など2兆円規模の対策を用意。食料品などの税率は据え置く軽減税率を導入する。
ただ、これらの対策が、これまで想定以上に消費を低迷させてきた増税のデフレ効果にどこまで対処できるか。しかも、米中摩擦の長期化、激化や円高進行の懸念、9月合意が流動的な日米貿易交渉など、環境的には厳しい与件が幾重にも重なる。
入念な準備を心掛けたい
今回、堅調に見える内需も特殊要因を除けば決して盤石でないことを念頭に置けば、前述の与件の推移によっては内需、外需とも総崩れになりかねない。しかも、その際に取り得る政府・日銀の対応にも限界がある。特に日銀には現状でも大規模緩和の副作用が懸念され、政策余地が極めて乏しい。政府はそうした点を踏まえ、入念な準備を心掛けたい。