日米貿易交渉、双方が利益得られる協定を
日米両政府が新たな貿易協定交渉の初会合を開き、農産品、自動車を含む物品の関税撤廃・削減交渉を開始したほか、電子商取引など「デジタル貿易」についても議論を行うことで合意した。
日米双方が利益を得られる協定を結ぶべきだ。
デジタル貿易も議論へ
初会合では交渉範囲をどうするかが重要なテーマだった。安倍晋三首相とトランプ大統領が昨年9月に発表した共同声明では、物品貿易に加え、早期に結論を得られるサービス分野などについても交渉することになっている。
茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、全品目の関税を協議する方針を確認。だが、自動車や農産品など「物品」を中心として、その他は必要最低限にとどめたい日本に対し、米国内では医薬品の知的財産権保護、金融など広範囲のサービス交渉を求める声が根強い。
今回は音楽配信やスマートフォンを使った配車アプリなどインターネットを介したデジタル貿易を明示するにとどめた。デジタル貿易をめぐっては、すでに各国が協調してルール作りが提案されており、日本はデメリットが少ない分野だとして合意した。
もっとも、サービス分野などについては日米の利害関係者の見解に開きがある。このため、交渉範囲にあいまいさが残ったと言える。
日米は今月から3カ月連続で首脳会談を開く方向で調整している。首脳間の話し合いが、日米の相互利益を実現する協定締結につながるよう期待したい。
ただ、来秋の大統領選で再選を目指すトランプ氏が対日貿易赤字の削減を強硬に主張した場合、米側が日本車の輸入数量制限などで揺さぶりをかけてくることが懸念される。赤字の8割を自動車分野が占めているためだが、国際ルールに反するような要求は受け入れられない。
米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)が昨年末に発効したことで、米国では農産品の対日輸出環境が悪化しており、日本に「TPP以上」の自由化を求める声が続出している。だが、こうした譲歩をすれば、何のためにTPPを締結したのか分からなくなる。
将来の米国復帰も念頭に、日本はTPPの自由化水準を「最大限」とする立場を貫く必要がある。TPPが知的財産権侵害などを禁止することで、中国を牽制(けんせい)する効果もあることを粘り強く訴えるべきだ。
為替条項は拒否せよ
トランプ政権内で、円安・ドル高を牽制する為替条項を協定に導入するよう求める声が出ていることも気掛かりだ。米国はカナダ、メキシコと昨秋に改定・署名した北米自由貿易協定(NAFTA)の新協定にこの条項を盛り込んでおり、ムニューシン米財務長官は日本との間でも導入に意欲を示している。
麻生太郎副総理兼財務相は今月下旬の日米首脳会談に合わせて米国を訪問し、ムニューシン氏と会談する方向だ。金融政策の手を縛られるような厳格な条項であれば拒否しなければならない。