新年経済、不安拭えぬ消費増税の影響
「アベノミクス」1年目の昨年は、年末の株価が年初来最高値で終わるなど、成果は総じて上々だったと言える。企業収益の改善が進み、ボーナスのアップなど賃金環境にも好転の兆しが見え始めた。
だが、2年目の今年は、依然デフレ脱却が果たされない中で、4月に消費増税が実施される。駆け込み需要が増えるほど、反動減は大幅になろう。何よりデフレ脱却の機運が削がれるのは大きな懸念材料である。
デフレ脱却は道半ば
昨年最後の取引だった12月30日の東京株式市場は、日経平均株価が9日連続で上昇し、終値は1万6291円31銭。前年末終値からの上昇率は57%で、41年ぶりの高さである。
異常な円高の修正と震災復興のための安定した公共投資で、自動車など輸出関連企業だけでなく建設などの内需関連企業も収益が回復。景況感も改善し、政労使が企業収益拡大を賃金上昇に反映させることで一致するところまでこぎ着けた。アベノミクスの大きな成果である。
だが、企業は設備投資に依然慎重であり、賃金のアップもこれからの話である。自律的な景気回復は実現していない。デフレ脱却は道半ばである。
それでも、安倍政権は昨年10月に今年4月の消費増税実施を決めた。昨年末にはその影響による景気腰折れを防ぐために、経済対策として5・5兆円規模の2013年度補正予算案を決定。14年度の当初予算案(一般会計で95兆8800億円)と合わせ、財政支出は総額101兆円超となる。
臨時国会で成立した産業競争力強化法や国家戦略特区法などに基づく成長戦略は、これからである。企業には景気の好循環を形成する上で大きな役割を担っているとの自覚と行動を期待したい。安全が確認された原発の再稼働は電力料金低下につながり、大きな支援となろう。
何より懸念されるのは、これまでたびたび強調してきたように、消費増税の影響を強く受ける個人消費に関して、前述の経済対策では低所得者世帯などへの現金給付のみで不十分なことである。個人消費は国内総生産(GDP)の6割弱を占め、その動向は経済活動を大きく左右する。企業が設備投資に慎重なのも、消費増税の影響への懸念を拭いきれないからである。
消費増税のデフレ効果(税率3%引き上げ)8兆円に比べ、経済対策の財政支出額5・5兆円は明らかに不足である。しかも前回、消費増税を実施した1997年度の経験からすると、14年度の政府経済見通し(実質成長率1・4%、名目成長率3・3%)や、13年度当初予算比16%増と想定した50兆円台の税収は、消費増税の影響を過小評価したきらいなしとしない。
危機感を持って臨め
14年度補正の編成も十分予想される。その際、安倍晋三首相は15年ぶりにつかんだデフレ脱却のチャンスについて「失ったら今後20年くらい取り戻せないかもしれない」と表明した危機感を持って臨んでほしい。国土強靭化推進と20年の東京五輪を控えた諸施設、インフラの整備・改修など安定した公共投資は何よりの好材料である。
(1月4日付社説)