米中貿易協議、米は構造改革迫る姿勢を貫け


 トランプ米政権は、米中両国が設定した3月1日の貿易協議の期限を延長した。2日に予定していた対中制裁関税の引き上げも先送りする。

3月下旬にも首脳会談

 米国は1日までに協議がまとまらない場合、2000億㌦(約22兆円)相当の中国製品にかける追加関税を、2日に10%から25%に引き上げる方針だった。トランプ大統領は、中国による知的財産権の侵害対策などで進展が見られたと評価。両国は最終合意を目指し、首脳会談を3月下旬にも開く見通しだ。

 米国が是正を求めた構造問題は、知的財産権、人民元相場、技術移転の強要、サービス、農業のほか、補助金を含めた非関税障壁の6分野。中国の対応策を盛り込んだ合意文書案を作成したが、改革の実施状況を検証する手法については依然として隔たりが大きい。

 両国経済には貿易摩擦の影響が表れつつある。米国は既に中国製品2500憶㌦(約28兆円)相当に追加関税を発動しており、中国は昨年の経済成長率が28年ぶりの低水準に落ち込んだ。一方、好調だった米経済にも陰りが見え始め、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げ路線の修正を余儀なくされた。

 トランプ氏が貿易協議の期限延長を受け入れた背景には、貿易摩擦の長期化を回避する狙いもあろう。貿易摩擦が解消すれば、世界経済の減速リスクの低減にもつながる。

 しかし、中国の対米貿易黒字解消と引き換えに構造改革を置き去りにすることがあってはならない。中国は対米貿易黒字解消に向けた輸入拡大には前向きだが、構造改革には慎重な姿勢を示している。しかし米国の議会や産業界では、中国の知財権侵害や技術移転の強要に対し、強い態度で臨むべきだとの意見が強い。

 中国は対米輸入を約130兆円増やすことを提案しているが、トランプ氏がこの「大型商談」の成立で中国に妥協しないか懸念が残る。もっともトランプ氏は、協議が不調に終われば、交渉の場を「去る」こともあり得ると述べている。

 ベトナムの首都ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談をめぐっては、トランプ氏が外交成果を上げるため、北朝鮮に対する制裁緩和で合意するのではないかと心配する声もあった。結局、トランプ氏は拙速な合意を避け、会談は決裂したが、これは正しい判断である。中国との協議でも安易な妥協をせず、中国に構造改革を迫る姿勢を貫くことが求められよう。

 米中貿易摩擦は安全保障問題も絡んで複雑さを増している。トランプ政権は昨年初めに公表した新国防戦略に基づき、米ハイテク技術の防衛に向けて取り締まりを厳格化。中国への追加関税発動は、競合する中国半導体に狙いを定めたものだ。

中国の覇権拡大許すな

中国による国有企業への補助金支給などは、ハイテク技術を向上させ、軍事力の強化にもつながる。中国は国家情報網や軍事力を大きく左右する次世代通信規格「5G」で覇権を握ることを目指している。トランプ氏は中国の覇権拡大を許してはならない。