レオパレス、安全確保を後回しにするな
賃貸アパート大手のレオパレス21は、天井や外壁などの施工不良が33都府県の1324棟で見つかったと発表した。
天井の耐火基準を満たさないなど危険性の高い物件もある。入居者の安全を軽んじていると言わざるを得ない。
耐火基準を満たさず
レオパレスの一部の物件では昨年5月、屋根裏に延焼や音漏れを防ぐ壁が設置されていないことが判明。全国4万棟弱の全物件を調査したところ、新たな施工不良が発覚した。
施工不良が見つかったのは1996~2001年に着工した物件。建築基準法では、耐火性能を高めるため、天井は板を2枚張るよう定められている。だが、これらの物件では1枚だったり、規定と異なる材料を使ったりしていた。また、外壁は耐火基準を満たさない材料や方法で取り付けられていた。
部屋を仕切る壁については、国の規定と異なる断熱材を使っていたため、防音性能が基準を満たしていない恐れがある。入居者の中には、隣室の話し声やせき、洗面台の水音まで聞こえると訴える人もいる。
レオパレスの深山英世社長は、施工不良の原因について「作業効率を上げるのが一番の狙いだった」と述べている。同業他社との受注競争を勝ち抜くためだったが、業績拡大に走るあまり、入居者の安全や快適な生活空間の確保を後回しにすることは許されない。
国土交通省はレオパレスに対し、物件の改修を速やかに行うとともに原因を究明し、再発防止策を報告するよう求めた。石井啓一国交相は「対応状況を把握し、適切に指導していきたい」と述べた。
物件には計1万4443人が入居しており、このうち早急に改修が必要な天井工事を伴う641棟の7782人には退去を要請する。費用はレオパレスが全額負担するが、現在と同等の条件の賃貸物件が周囲に見つからず、家賃の高い物件に転居しなければならない場合、差額は補填されないという。入居者が憤るのも無理はない。
レオパレスは3月末までの転居を要請しているが、春の引っ越しシーズンとぶつかるため、業者にも困惑が広がっている。対象者が3月末までに転居できるかは不透明だ。混乱を招いた責任は重い。
レオパレスは単身者や学生向けの家具、家電付き賃貸アパートなどを東京や大阪などの大都市圏を中心に展開し、建築を請け負うほか、完成後はオーナーから物件を一括して借り上げ、賃貸管理も行っている。
ただ、賃料や修繕費などをめぐってオーナー側から民事訴訟を起こされるケースも発生している。こうした利益優先の姿勢が、今回の不祥事の背景にもあるのではないか。
企業体質改善に努めよ
施工不良は入居者だけでなく、オーナーに対する背信でもある。オーナーからは「あきれた。ここまでの規模とは思っていなかった」と怒りの声が上がっている。
レオパレスは入居者やオーナーの厳しい批判を真摯(しんし)に受け止め、信頼回復と企業体質の改善に努めるべきだ。
(当記事のサムネイルはWikipediaから引用いたしました)