のぞみ台車亀裂


 新幹線「のぞみ」の台車に亀裂が見つかった問題で、製造元の川崎重工業が台車枠の製造過程で底面を削り、鋼材の厚さが基準より薄くなっていたことが分かった。

 走行中に台車が破断していれば脱線した可能性もある。川重は品質管理のずさんさを猛省すべきだ。

 作業手順は現場任せ

 台車の亀裂は昨年12月、博多発東京行き「のぞみ34号」で見つかった。JR西日本の乗務員らが異音や異臭に気付きながら約3時間にわたって運行を続けたことも問題となり、運輸安全委員会は新幹線初の重大インシデントに認定した。

 台車枠の底面の厚さは7㍉以上が基準だ。しかし亀裂が見つかった台車では、最も薄い部分が4・7㍉にとどまっていたという。耳を疑うような話だ。台車に亀裂が生じれば大惨事につながりかねず、日本が誇る新幹線への信頼を深く傷つけることになる。単なるミスでは済まされない。

 川重の社内規定では、台車枠の鋼材を削ってはいけないと定める一方、部品との溶接部分の周辺に限って0・5㍉まで削ることが許されていた。だが現場の責任者がこの規定を拡大解釈し、隙間が小さくなるまで鋼材を削るように指示。さらに作業員に対し、0・5㍉を超えて削らないように指示することを怠っていた。

 このため、底面の厚さが7㍉未満となるケースも多くあったという。一方、生産技術部門からの指示はほとんどなく、完成品の検査項目に台車枠底面の厚さは入っていなかった。作業手順を現場任せにした結果、今回のような事態を招いたことを重く受け止める必要がある。

 JR西は2007~10年に川重製の台車を303台購入した。確認したところ、底面の厚さが7㍉に満たない台車が100台あった。JR東海でも同様の台車が46台あることが判明するなど影響が広がっている。川重は台車の交換費用を負担する方針だが、業績への打撃は避けられまい。JR西とJR東海から損害賠償を求められる可能性も否定できない。

 川重は造船、航空機部品、ガスタービンなどさまざまな事業を展開する複合経営が特徴だ。それぞれの事業同士の関わりは弱く、各部門の独立色が強いのは、検査データの改竄が発覚した神戸製鋼所とも共通する。

 鉄道車両事業は川重の連結売上高の約1割を占め、18年3月期は前期比5・8%増の1450億円を見込む。

 7年8月には、バングラデシュの首都ダッカで初めて整備される都市高速鉄道の車両や車両基地などを計400億円で受注した。今年1月には米ニューヨーク市交通局の地下鉄車両を約4000億円で受注するなど海外展開も好調で、政府のインフラ輸出戦略の担い手ともなっている。

 外部の目でチェックを

 しかし亀裂問題が深刻化すれば、こうした受注活動にも影響を与えかねない。

 外部の専門機関などの目で現場の作業をチェックする体制を構築し、信頼回復に努めることが不可欠だ。