14年度税制改正大綱は景気腰折れ防止に十分か
与党の自民・公明両党が2014年度の税制改正大綱を決めた。14年度はデフレ脱却を目指す中、消費増税が実施される。
デフレ脱却と近視眼的な財政再建の二兎(にと)を追ったため、どちらも半端な内容になった。消費増税による景気腰折れを防止できるのか、懸念は消えない。
軽減税率導入時が曖昧
安倍晋三政権が誕生して間もなく1年。「アベノミクス」によって円安・株高が進み、デフレ脱却の兆しも見えてきた。だが、来年4月の消費増税を決め、その増税による景気腰折れ防止のために、政府は13年度補正予算案で5・5兆円規模の経済対策を決めた。今回の税制改正大綱も狙いは同じである。
今改正の最大の焦点だった軽減税率については、その導入を「消費税率10%時」と曖昧にし、しかも必要な財源を確保して国民の理解を得た上でと条件を付けた。
消費増税で最も懸念されるのは、国内総生産(GDP)の6割弱を占める個人消費の落ち込みである。先の経済対策では低所得者世帯などに総額6500億円の簡便な現金給付を決めたが、1回限りの一時的なものである。
消費税は所得の低い世帯ほど負担が大きくなるだけに、食料品などの税率を低く抑え、国民全体の負担を広く和らげる軽減税率は欠かせない。導入時期を「10%引き上げ時」と明確にし、対象品目の選定など制度の詳細な検討を早急に開始すべきである。
また、年収が1200万円を超えるサラリーマンは16年1月から、同1000万円超の場合は17年1月から、所得税と住民税の給与所得控除が縮小される。増税である。一方、企業関連では、復興特別法人税を1年前倒しで13年度末で廃止し、法人実効税率引き下げは「引き続き検討」との記述にとどまった。
総じて企業減税、家計増税という方向は、デフレ脱却を目指しながら、デフレ政策の消費増税を実施するという矛盾の結果である。
本来であれば、安倍首相が政権発足当初に最優先の経済課題としたデフレ脱却の方針を貫くべきで、消費増税は再来年以降に延期すべきであった。
企業減税は「アベノミクス」の第三の矢である成長戦略を進める上で理に適っているし、後の設備投資増加、雇用拡大につながり、給与所得の向上で家計に波及して個人消費の増加も見込める。デフレ脱却の、それこそエンジンである。
ところが、財務省を中心とした近視眼的財政再建思考のゆえに、デフレ脱却から名目GDPの増加、税の自然増収というプロセスを、安易な税収増の道である消費増税で自ら壊し、企業減税も、消費増税による景気腰折れ防止策も財源を気にして半端なものになった。
デフレ脱却が最優先
今回の経済対策の財源は、約半分が企業業績の改善による税収の上振れ分である。だからこそ、景気拡大が大事なのである。消費増税を決めた以上、腰折れ防止策はデフレ脱却を目指す上でも極めて重要である。目先の財政悪化回避にこだわるべきでない。
(12月17日付社説)