4~6月GDP、内需主導をどう定着させるか
2017年4~6月期の実質GDP(国内総生産)は前期比1・0%増、年率換算では4・0%増と市場の予測を大きく上回る伸びになった。個人消費と設備投資などの内需が成長を牽引、輸出の落ち込みを補い高成長を支えた。
数字を見れば理想的だと言える。だが、高成長の背景には一時的要因もある。好調の持続性への疑問点は少なくない。楽観は禁物である。
一時的要因による高成長
4~6月期GDPでは、個人消費が前期比0・9%増、設備投資が同2・4%増と、ともに消費税増税前の駆け込み需要があった14年1~3月期以来の高い伸びを示した。住宅投資(1・5%増)、公共投資(5・1%増)なども伸び、文字通り、内需主導の成長を実現。輸出(0・5%減)のマイナスを補うに十分な伸びだった。
問題は内需主導の成長が今後も続くか、別の言い方をすれば、いわゆる経済の好循環(賃金増→消費増→生産増→企業収益増→投資・賃金増)を実現し自律的成長の軌道に乗っているかどうかである。
結論から言えば、否である。政府もそれは認めているようで、茂木敏充経済再生担当相は「良い数字だが、消費はまだ力強さに欠ける」と指摘している。
“出来過ぎ”との見方もある今回の高成長には、一時的要因も少なくない。例えば、個人消費ではエアコンが猛暑による需要と買い替え需要が重なって伸びたこと、自動車では三菱自動車の燃費不正で前年落ち込んだ新車販売の反動増などが挙げられる。
5・1%伸びた公共投資は、16年度第2次補正予算の執行が本格化したことによる効果である。とても自律的成長と呼べる状態ではない。
好循環の起点となるべき賃金についても、人手不足と言われる状況でありながら、企業は人材獲得のための賃上げをバブル期ほど本格化させていないと指摘されている。
4~6月期に好調だった企業の設備投資は、先述の人手不足に対応する省力化投資が中心。このため、生産増による企業収益の拡大が、必ずしも雇用者所得の増加に結び付くとは限らないわけで、収益拡大が賃金増→消費拡大へとつながる好循環が描けないのである。
宅配業界などで顕在化している人手不足が他業種にも波及し、メーカーの生産が停滞を余儀なくされ、経済成長を制約するという不安もある。
一方、海外に目を向ければ、北朝鮮情勢の緊迫化で、世界的な株価下落など市場の混乱も懸念される。
また、米国の利上げなど金融引き締めの状況によっては、米経済の成長鈍化や新興国からの資金流出につながりかねず心配の種は尽きない。4~6月期GDPでマイナスとなった外需は、今後も下振れリスクに警戒を要しよう。
賃上げの積極的後押しを
経済最優先に取り組むとしている安倍改造内閣には、好循環の実現に向け、「人づくり革命」や生産性向上などの重点課題に取り組み、企業の賃上げを積極的に後押ししてもらいたい。