クロマグロ、個別割り当て制導入も検討を


 高級すしネタとして人気の太平洋クロマグロ漁で日本が難問に直面している。太平洋クロマグロは資源保護のために国際的な漁獲規制を行っているが、日本は30㌔未満の小型魚の今期漁獲枠である4007㌧を漁期終了を待たずに突破。6月末まで全国で原則禁漁となっている。

今期漁獲枠をすでに突破

 超過分は次の漁期の漁獲枠から差し引かれるが、日本の資源管理が機能していないと見られても仕方がない。8月に開かれる「中西部太平洋まぐろ類委員会」での新たな漁獲規制の交渉にも影響しよう。

 漁獲される太平洋クロマグロの約80%を消費する日本に対しては、野生動物保護団体からも厳しい目が向けられている。クロマグロ漁を継続させるためには、資源管理の抜本的な対策が必要となっている。

 太平洋クロマグロの資源量は、1961年に16万㌧だったのが、乱獲で最近は1万㌧余りに減っている。これに対し日本は、消費者や漁業者のために、資源回復を図りながら漁獲を続けるという戦略を取ってきた。

 特に30㌔未満の小型魚の規制は、卵を産む親魚を増やす鍵になるとして、日本が主導してきた。その日本が漁獲枠を突破したのでは、交渉の主導権を握ることは容易ではなくなる。

 前期は漁獲枠の約6割の2536㌧だったが、今期は日本近海へのクロマグロの来遊が増えたため、沿岸の定置網で他魚に混ざって漁獲されるケースも増えた。これを報告しなかったり、承認なしで操業したりするなど、ルール違反が12県で確認されている。

 こういう状況に危機感を抱いた水産庁は、罰則付きの法規制を2018年1月から適用する方針だ。漁獲枠を超えても操業を続けた場合、3年以下の懲役または200万円以下の罰金、水揚げ量の報告違反は30万円以下の罰金というものだ。

 現在の漁獲規制は、国全体での漁獲可能量(TAC)を設け、さらにそれを各県に割り当て、漁業者の自主的協力によって行うもので、罰則規定がない。そういう意味では、前進が期待される。しかし全体のTACを決めただけでは、早く獲った方が勝ちという状況は変わらず、漁業者の競争は緩和されない。今期、早々に上限を突破してしまった背景には、そういった基本的な問題がある。

 この問題を解決し、資源回復を実現するには、船や漁業者に個別にTACを割り当てる個別漁獲割り当て(IQ)制度の導入を検討すべきである。これによって、漁業者は過剰な競争や無駄な投資の必要がなくなり、市況を見て出荷することができるため、経営も改善できる。他の魚種ではあるが、IQ制度の導入で、ニュージーランドやアイスランドの漁業者は資源回復と経営改善を実現している。

資源回復に強い指導力を

 世界に誇る水産大国であった日本だが、資源管理では他の水産先進国に後れを取っているのが現状だ。TACを導入している魚種が、サンマなど7種にとどまっていることがそれを象徴している。水産資源の回復に強いリーダーシップが求められている。