16年度予算案、増税に耐え得る経済に十分か
政府は一般会計の総額を96兆7218億円とする2016年度予算案を決定した。当初予算としては4年連続で過去最大の規模である。
安倍政権が重視する「1億総活躍社会」の実現に向けたものであるとともに、17年4月に予定されている消費税再増税の直前の予算でもある。増税に耐え得る景気の拡大に十分か不安が残る。
過去最大だが実質横ばい
16年度予算案は当初予算としては確かに過去最大だが、その伸びは前年度比0・4%増と実質横ばい。政策経費ではさらに小さい同0・3%増である。
これは財政面からは景気に対してわずかのプラス、あるいはほとんど中立的であり、景気刺激効果がほとんど期待できない予算である。
裏を返せば、「アベノミクス」第2ステージの政策目標である「名目GDP(国内総生産)600兆円」の達成に繋がる景気拡大に向け、好調な収益を上げている企業に一段の賃上げと設備投資で頑張ってもらい、収入の増える家計も消費を増やして大いに貢献してほしいとの意思表示でもある。
こうした点から見れば、16年度予算案は企業の投資活動や家計の消費拡大を促す環境整備に配慮した予算と言える。
一般歳出の半分超を占める社会保障費の伸びを極力抑える一方で、「目玉政策」である「1億総活躍社会」関連予算に約2兆4000億円を充てた。子育て支援など「希望出生率1・8」に1兆4740億円、介護環境の充実など「介護離職ゼロ」に2360億円程度などだが、これはアベノミクス第2ステージの低所得者層などへの分配政策である。
企業には法人税の引き下げで一段の賃上げや設備投資を促す。大筋合意に達した環太平洋連携協定(TPP)も、そうした環境づくりの一環である。
国と地方を合わせた法人実効税率は32・11%から16年度は29・97%に引き下げられ、7280億円の減税である。もっとも、これと引き換えに設備投資減税が廃止され、赤字企業にも課税する外形標準課税が強化されているため、その効果の程度には不確かな面もある。
懸念すべきは、いわば民間頼みの景気拡大の危うさである。企業収益は確かに好調で設備投資計画も低くはないが、12月の日銀短観が示したように、規模や業種を問わず全ての企業が景気の先行きに慎重な見方で、投資意欲に水を差す恐れがある。
中国の減速など新興国経済の低迷に加え、米国の利上げが世界経済に与える影響に懸念や不透明さがあるからである。
現状でも実質成長率1%程度の実勢で景気に力強さはなく、政府経済見通しで示した16年度の1・7%も、海外情勢によっては絵に描いた餅になり得る。財政規律の緩みを云々する前に、それだけ危うさがあるということである。駆け込み需要に少しは期待できるものの、17年の再増税に耐え得るかどうか。
文教科学費微減を憂慮
文教科学費の微減は、ノーベル賞受賞者が説く、有為な人材を育成し科学技術立国を目指す方向と政策が逆で憂慮する。
(12月26日付社説)