9月日銀短観、景気の回復力の弱さ確認


 日銀が発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は、景気の回復力が依然として弱く、4月の消費税増税の経済へのダメージが小さくないことを改めて示すものとなった。

 調査時点より円安が進行しており、内需関連企業の景況感には一段と暗い影を落としそうである。来年秋の消費税再増税を実施できる状況ではない。

 増税と円安で消費低迷

 企業の景況感を示す業況判断指数(DI、「良い」と答えた割合から「悪い」の割合を差し引いた値)は、大企業製造業で前回6月調査より1ポイント上回り、2期ぶりに改善したが、ほぼ横ばいである。

 一方、大企業非製造業や中小企業の製造業、非製造業は4月の消費税増税後の消費低迷や円安による原材料費の上昇などにより、DIがそれぞれ6ポイント、2ポイント、2ポイント悪化した。

 消費の低迷には天候不順もあるが、大きく影響しているのは、何と言っても消費税増税と円安である。

 政府の強い後押しもあって、それまでにない賃上げが実現したが、増税と円安で実質所得が減少している。円安による原材料費の上昇に伴い生活必需品の値上げも相次いでおり、消費を手控えさせている。

 内需関連の企業にとっては、原材料費とともに原発停止による電気料金の上昇というエネルギーコストの増加も収益の圧迫要因になっている。

 2014年度の設備投資計画は、大企業全産業で前年度比8・6%増と前回調査(7・4%増)から上方修正されたものの、中小企業全産業では同12・9%減と依然大幅に前年を下回っている。

 雇用人員の判断指数は大企業がマイナス8、中小企業はマイナス16で、規模に関係なく人手不足感が出ているようである。

 3カ月後の景気については、大企業製造業は現状と同水準の横ばい、大企業非製造業と中小企業製造業は1ポイントとわずかな改善を見通している。

 しかし、円相場は今月に入って一時、1㌦=110円台まで下落するなど調査時点から円安がさらに進行しており、小幅改善という景気の持ち直し期待に水を差す恐れが小さくない。一方、中小企業非製造業では1ポイント悪化しており、景況感は回復していない。

 安倍政権は経済最優先を掲げ、「アベノミクス」により長年のデフレ経済からの脱却を目指している。が、4月の消費税増税以降、景気回復の勢いが萎えている。何より、GDPの6割弱を占める個人消費の回復が見通せない。

 追加の金融緩和策に期待する向きもあるが、それはさらなる円安を招き、物価上昇を通じて実質所得の減少を長引かせ、個人消費回復の展望がさらに不透明になろう。経済の好循環のサイクルが途切れ、デフレ脱却は遠のきかねない。その結果は物価高の不況、いわゆるスタグフレーションである。既にそうした状況に入っていると見る識者もいる。

経済最優先に立ち返れ

 安倍政権は経済最優先に立ち返り、今国会課題の「地方創生」に取り組むべきである。

(10月4日付社説)