消費増税、景気下支えに万全の態勢を
消費税率が5%から8%に引き上げられた。1997年4月以来17年ぶりの消費増税だ。
デフレ脱却途上での消費増税には、回復傾向にある景気を腰折れさせる懸念が小さくない。政府は景気の下支えに万全の態勢で臨んでほしい。
17年ぶりの税率引き上げ
消費増税の目的は、増え続ける社会保障費の財源を安定的に確保し、財政の健全化を進めることである。2012年8月に民主、自民、公明などの賛成で成立した消費税増税法により、今回の8%と15年10月の10%への税率引き上げが決まった。実施は時の首相が経済状況などを総合的に勘案し最終判断する。15年10月の増税は今年7~9月の経済状況を踏まえ、年末に判断する見通しである。
今回の増税に関し、景気への深刻な影響を懸念する声は少なく、日銀はじめエコノミストの間でも楽観的な見方が多い。
その理由の一つは、政府が景気への悪影響を想定して、13年度補正予算に経済対策を盛り込み、先月に成立した14年度予算も一般会計で過去最大規模に組むなど積極的な姿勢を見せていることである。さらに、今春闘で安倍政権が求めていた賃上げについても、主要企業で高い水準のベースアップ(ベア)回答が相次いだこともある。
確かに、こうした点は、その後に景気を腰折れさせ、10年以上続く深刻なデフレ状況をもたらした――結果として財政をも大幅に悪化させることになった――前回97年度の消費増税時とは状況が異なっている。当時は、増税のほか特別減税の打ち切りや公共投資の削減など、近視眼的な財政再建論に基づく大幅な緊縮・増税予算を執行したからである。
とはいえ、懸念が拭えないのは、消費増税のデフレ圧力の大きさと、このところの景気回復力の弱さである。まず、2段階の増税によるデフレ圧力は計約13兆円で、97年度のそれとほぼ同規模である。
景気に関しては、確かに景況感の回復傾向が徐々に強まってきてはいるが、3月半ばに明らかになった13年10~12月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、前期比0・7%増に下方修正され、7~9月期に続く1%割れになっている。
輸出が伸び悩んでいることに加え、牽引(けんいん)役として期待される企業の設備投資が、同改定値では下方修正されるなど大方の予想を裏切り、力強さが相変わらず見られない。政府も「駆け込み需要があることを勘案すると弱含み」(甘利明経済財政担当相)と景気の変調を認めざるを得ない状況なのである。
賃上げが実現してもまだ主要企業が中心である。一方で、物価は円安などから上昇傾向が続いており、実質賃金はマイナス。加えて、燃料高や原発停止による電気・ガス料金の引き上げが相次ぎ、家計も企業もさらなる負担増が不可避である。この時期の増税は消費、設備投資に一段のブレーキをかけることになりかねない。
名目GDP拡大が不可欠
税の安定的確保には、自然増収が見込める名目GDPの拡大が不可欠。景気腰折れ防止に万全を尽くしてほしい。
(4月1日付社説)