各党代表質問 前向きな憲法論議を聞きたい
衆院本会議で安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党代表質問が行われ、立憲民主党の枝野幸男代表、自民党の林幹雄幹事長代理が質問に立った。参院選、第4次安倍再改造内閣の発足、立憲民主、国民民主両党などの会派合流を受けた新たな与野党の枠組みで臨時国会の論戦がスタートしたが、焦点の一つである憲法論議に前向きな議論を期待したい。
枝野氏が衆院議長を批判
代表質問は予定時間を1時間半近く遅れて始まる波乱があったが、これは憲法改正のための国民投票法改正案について大島理森衆院議長が地元の青森県で開催された自身のパーティーで「合意を見つけてほしい」と発言したことに野党が反発したためだ。
枝野氏は質問の冒頭で、議長の中立・公正を求めて大島氏を批判したが、改正案は昨年の通常国会で趣旨説明がなされて審議入りして1年以上も経(た)っていることを踏まえれば、大島氏の発言は野党が批判するほど逸脱したと言えないのではないか。
林氏は憲法審査会の委員らが基本法(憲法)改正を適時に行ってきたドイツを視察したことに触れ、冷静な議論を求めた。与野党は、有権者が投票する際により便利な場所で投票できるようにするなどの改正案について協力できるはずだ。
消費税率10%への引き上げについて、枝野氏は「強い懸念と反対にもかかわらず政府は消費増税を強行した」と述べ、キャッシュレス決済のポイント還元事業に参加できた事業者が、対象となる店舗数の4分の1程度と遅れたことに「制度自体に問題があった」と批判した。確かに、わが国の小売店では手数料の負担を理由に現金決済のみの場合も多い。
当初から与党が、選挙のために税率アップの痛みを和らげようと弥縫(びほう)策を講じたという指摘は、軽減税率などを含めて存在した。
ただ、枝野氏は民主党政権時代に起きた福島原発事故の経験から、台風15号による停電被害への対応について東京電力を批判したが、同じ政権時代に消費税率10%への引き上げを主導している。
新党を立ち上げたとはいえ、同じ民主党時代の政治勢力が今回、合流会派を組んでいる。枝野氏が「消費(低迷)こそが経済低迷の圧倒的要因だ」と述べ、「その中で消費増税を断行したことは経済政策の観点からも著しく問題だ」と安倍政権を批判するのは矛盾する。
枝野氏ら立憲は共産党を含めた野党共闘の中軸であり、米下院選で一部台頭した民主党左派の「社会民主主義」にも影響されたとみえる。大企業、富裕層への課税の強化など社会主義的な訴えを強めた印象だ。
日本の伝統から遠い立憲
また、昭和天皇の写真を燃やした灰を踏みつけるなどの映像展示を含む国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」への文化庁の補助金撤回を「事実上の事前検閲につながる」と糾弾調に訴え、同性婚を可能にする民法改正案への支持を呼び掛けた。
日本の歴史・伝統、家庭観から遠いところに価値観を置く政党になったと言えよう。